今年の冬もコミケ中止

東京ビックサイトの東棟には東京オリンピックの放送ブースが設置されていて

コロナだろうが、中止かも知れないだろうが兎に角、大きなイベントは出来な

い状況になっています。我々、印刷屋からするとコミケ中止も大きいけど、各

メーカーの業界展示が出来ない方が遥かに大きな問題です。1年間を通して1

週間に一業界展示会をずっと行ってきました。大体4日の展示会で出店する企

業は、300社から500社に及びます。当然、一つの会社に印刷物は何十と在りま

す。それらの仕事が忽然と消えてしまったわけで、特に中綴じなどを主にやっ

て来た印刷屋は、手痛い打撃を被っています。コミックマーケットの最初の出

発点は出版流通に乗らないマニアックな同人誌、デビュー前の新人の腕試し等

創作発表の場であった訳ですが、一番大きな成長の理由はリアルな交流に在っ

た訳です。それはネットの時代の現在でも強まりこそすれ、色褪せることなく

宅頭たちの妄想の出発点となっております。リアルな五感の記憶無しで妄想は

育つ筈も無く、一年に2回の展示即売会は、サイクルとしては順当な物でした。

お盆と大みそかに臨界点がやって来ると云うのは、世間のマグマにもしっかり

組み込まれている。エアーコミケは、「コミケ」のエッセンスを全て搾り取っ

てしまって本の売り買いと云うただの流通に堕してしまう冒涜です。印刷屋は

本が創れて商売が成り立てば良いかもしれませんが、コミケと云う祭りは消え

るでしょう。「コミケ」はこの日本で最後に残った肉体と欲望の昭和の興行な

のです。コロナが殺そうとしているのは、その様な物の全てで在ります。