コンケラーレイド
若い職人が、「透かしが入っているんですが、普通に刷って良いのですか?」と聞いてきました。 透かしを見ると「conqueror」と入っています。 イギリス、アルジョウィギンス社製のコンケラーレイドです。 朝工場で見たときは、黒い高そうな包装紙に綺麗に包まれた見慣れないのが有るなと思っていましたが、コンケラーだったのですね。 随分久しぶりです。
寸法450×640。 このサイズに対して、等間隔に透かしが入っているので、切り方によって何種類かの透かしの位置の違うものが出来ます。 サイズは他に4/6判の横目が有ります。 紙の流れ目とレイド模様は合っていますか、紙の切り方によっては、透かしもレイド模様も逆になる場合がありますので、注意が必要です。 ステーショナリーペーパーでは最高級レベル。 ホテル、外資系、大使館、高級ブランドショップのステーショナリーペーパーとして、良く使われています。 高級ホテルのこんな紙に万年筆で、まだほの暗い朝方、「先に帰るね、また電話するから...。」なんて置き手紙を残したいという妄想を温めながら、齢だけ重ねてしまいました。 そのような事を夢想させるだけのことがある色気のある用紙です。
透かしと云えば、バンクペーパーにも入っています。 スリーダイヤモンズ、アイリスボンド、スピカボンド等々。 こちらは三菱製紙さんが作ったのでしたでしょうか? 2色機を持っていたので、この手の仕事は多かったです。 もう一つ透かしと云って忘れられないのが、卒業証書。 大学や高校のです。 いつも2月、3月頃入って来ていました。 新局紙の古染の感じでとても厚いもので、中心に学校章の透かしが入っています。 予備がいつも少なくて、紙さばきが悪いので、中々スムーズに通ってくれない。 おまけに、この透かし入りの厚紙用紙を作っているのが、福井県のある業者で、 大体注文してから出来上るのに約1ヶ月。 印刷してから筆耕業者に廻るので、私が失敗したら、卒業証書の無い卒業式になってしまうのです。 これは本当に緊張しました。 筆文字の黒さに合わせるために目一杯インキを盛らなくてはいけません。 もう一つの透かし入り、お札は、逮捕されるので印刷する事が出来ませんが、こちらの妄想も尽きないのです。