ザ・ルーム・ネクスト・ドア

2025 年 2 月 12 日

ぽっかり空いた久々の祝日は、映画と外食の為、街に出かけました。

渋谷の街は、相変わらずの観光客で賑っていた。私などは西洋に対

する憧れが強い世代ですが、時代は変わったのかも知れません。確か

に私も西洋に対する見方が違ってきている。映画の候補は「オオカミ

の家」を撮ったチリの監督の「ハイパーボリア人」と「ネクストドア」

かみさんがオオカミの家はもう良いと云うので「ネクストドア」に。

ベネチア国際映画祭で金獅子賞。20分の拍手喝采ですし。しかし私

には、理解できなかった。リアリティが感じられない。AIが造った

本なのかな?CGも使われているのかな?と最後の方は思ったのです。

原作は2013年だからAIは、まだ無いはず。私の感覚が世間とず

れ始めているのか?この辺りの感覚は凄く重要で、こんなにみんなと

違っていたら、私はもう何も喋れない。ショックを感じていたけど、

かみさんも、ハイパーボリア人に行くべきだったと云うので、胸を

なでおろすのですが、「いや待てよ、二人で奇妙な世界に迷い込ん

でいる」可能性もある。年を取ると微妙に感覚がずれて来ますから。

惨たらしく、苦痛に満ちた死をネタに財を成した人が痛いのいやや

と云う風にならないのと違いますやろか?

「透析を止めた日」堀川惠子

2025 年 2 月 10 日


血液透析と腹膜透析。日本の腎臓透析の97%が血液透析です。

腹膜透析は2%ぐらい。こちらの方が楽でお金がかからないのに

業界全体で血液透析を薦めている。1・2年でビルが建つようです。

実際の医療現場がボンボン出てくる。巨大医療ビジネスの闇。

検体と称した、「あとがき」の日付、2024年8月6日。

堀川さんは、医療界にとてつもない爆弾を破裂させた。

軽~、書きましたけど、愛の物語で、献身であり、サスペンスであり

見事な調査報道です。堀川さんは、「暁の宇品」から2冊目ですが

凄い書き手ですね。第一部の夫婦の愛の物語が壮絶です。

 

「ここにいるよ」2刷り

2025 年 2 月 10 日


造本装幀コンクールと云うのは、業界向けの賞なので業界では評価されても

それが販売に結び付くかと云うとそうでも無くて低迷していましたが11月に

ひとり出版社と云う切り口も含めて大手新聞社にインタビュー記事が載ると

飛ぶように売れ始めてやっと2刷りになりました。西山さんはおひとりで出

版社を立ち上げて、編集から営業、装丁、印刷製本など一人で何役も熟して

おいでのスーパーウーマンです。丁半博打の鉄火場のような処で勇壮果敢、

おひとりで切り盛りされるだけあって向こう意気はそれなりにお強い。そん

な西山さんをしょっちゅう泣かせているのが私です。この前の表彰式も、表

彰台に上がらなかったのは、最後の製本方法で対立して「イニュニックは、

引かせて頂きます」と一旦は仕事を断ったからなのです。そこで泣かれてし

まって渋々と印刷だけという条件でお仕事を受けたした次第です。(講演等

色々な処でお話しされているようなので)この2刷りでも揉めました。カバ

ーの色等、色々と変えると云うのです。「それは駄目でしょう?」と云いま

した。焦げ茶色で地味だからピンクにしたい、その方が売れる筈と云うのが

先生の言い分。「そんなことしたら、業界全てを敵に回しますよ」と。

この話も台湾の「ひとり出版社」というイベントで「印刷会社の社長におこ

られた」と云う笑い話で、台湾の新聞にも書かれた記事が有ったのでばらし

ます。私は何だか西山さんのネタにばかりなっている感じなんです。

今、大手出版社をやめて「ひとり出版社」を立ち上げておいでの方は、本当

に沢山おいでです。作家が自分で本を作って売ると云うのから、編集者が作

家と一緒に本を作って売るという、より強力なタッグが生まれ始めている。

販売イヴェントも何だか凄い勢いで増えています。本が売れないのではなく

て、今の本のビジネスモデルが破綻し始めているだけのような気がします。

「ひとり出版社」と云うのがこれからの出版の王道になるのかどうか?どち

らにしても少部数出版は大体イニュニックに来てくれている様で、うちとし

ては目出度し目出度しなのです。


日曜日、車検の車を引き取って

2025 年 2 月 3 日

車検で車を引き取りに行ったついでに販売店さんと少し話しました。

今車を注文したらどれくらい待つのですか?と聞いたら「車種によ

って受け付ける時期が異なります。」と云います。車によって、何

年も待つことが有ったので今は、そこを短くするために車ごとに、

受注しているようです。ランクルやトラックは秋以降と云います。

国内向けはどれぐらい作るのですか?と聞くと「10%です。」

その瞬間、一緒に話聞いていた女子販売員が向こうに背中を向け

たのですがその横顔には笑みが浮かんでいた。言い切った上司に

向けた笑いなのか、とがった顔に変化する私への笑いなのか?

販売店全国に5000か所あるようですが、10%しか国内販売しな

いのだったら500か所で良い様に思います。メーカーと販売店

は別会社だと思います。売り上げも10%になるのだったら笑って

いる場合では無い様に思いますが、どういうからくり?

円安はあらゆるところに波風を送っています。外国に売る方が儲

かるから国内販売、メンテナンス、修理サービス、中古車市場が

インチキをせざる得ない。これは車に限った話ではなくてあらゆ

る事に及んでいる。機械が壊れない、修理依頼が無い。そうなる

と困るのは中小の零細だけでは無いのです。有名メーカーもやり

出している。モノが壊れたらなんでも信用しない方がいいですよ。

貧乏になって金が無くなったらどんなことでもやるのが人間です。

「対馬の海に沈む」窪田新之助

2025 年 1 月 24 日


25年ぐらい前、飯山の友人の所に遊びに行った時に道の駅に立ち寄り

ました。そこにJAの職員がテーブル並べて農産物を売っていました。

皮付き落花生が1キロ、500円で売っていたので思わず「安い!」

と袋を手に取り裏の出品者を見ました。そこには中国産と書いていま

した。そこに立っている職員は、嬉しそうに見返してきました。その

時初めてこいつらは農家の味方では無いのだなと認識したのです。

それから少しして義父が亡くなりました。兵庫県で農林事務所の所長

をしていてすでに退職して随分経っていましたが、農協とも縁は続い

ていました。遺品を整理していたら地震保険の契約書が3つ出て来ま

した。年寄りに対して随分アコギな事をするんだな、と思いましたが

これも地域の縁だと納めました。

対馬は、「日本残酷物語」にも出てくる産業も何もない処です。唯一

広島の漁師が対馬まで漁に来てイカを干して持って帰ったという記録

があるくらいで平らな処が何処にもない、砂浜さえない処。この土地

のJAの話です。農地が1.7%しかない島、人口が3万人ちょっとの島。

ここのある職員がJAの保険で全国のトップに何年も続けて表彰され続

けた記録。珍しく一気に読みました。当人の自殺から始まって、続く

なぞの解明。しかし最後に現れてきたのは、何とも遣る瀬無い日本社

会の縮図。何とも残酷です。義父の家屋と田んぼと畑と山林が無住の

まま残っていて、コロナ禍前は、年取ったらここで百姓をやろうかな

なんて考えていたのです。ある時、除草剤の危険度をそこの隣の人に

聞いたのです。「そしたら何も問題ないよ」と云う答えです。「農薬

ではなくてラウンドアップですよ」と云うと「農協の人が問題ないか

ら撒け、と云うんじゃから」と云う答えでした。その時に死ぬまで印

刷業を続ける覚悟が出来たのです。農業の闇や兵庫県の闇は、沢山知

っているのだけど、かみさんの家系が公務員一家だからあまり書くと

怒られるのです。

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