蝋引き加工
蝋とは蝋燭の蝋。ご婦人の妖しい柔肌にポタあ~り、ポタあ~り。と云う使用法もございますが、 一般には、停電の夜に家族集って、怪談話に興じる際に、座の中心にそっと灯すともし火。 又は仏壇の灯明に使います。ロウソクの火は妖しくも有、優しくも有、心の奥深い処へ働きかけてくれます。
紙にロウを染み込ませて、撥水性を高めるロウ引き加工と言う加工方法があります。 印刷して製袋した封筒にロウ引き機でロウ引きします。 イニュニックの角2封筒は、ロウ引きしてあります。 東海クラフトにスミ1色で、ロゴ、社名、住所等を印刷して製袋して、その後、ロウ引きしました。 ロウ引きのロウはロウソクのロウほど固くありません。 油とロウを混ぜ合わせ丁度良い固さにします。 火でグラグラ煮立たせたロウをローラーで巻き取り乍ら均一になる様に紙に塗布して行きます。 冷めて乾けばロウ引き封筒の完成です。 アッサリ淡泊な素材な風合いのクラフト封筒が、ヌラヌラテラテラ脂ぎった炭鉱夫、 シワが入ればくっきりと刻まれた熟練の表情に、変貌を遂げます。
築地の市場で魚介類を買うとロウ引きの袋に入れてくれます。 特に生きた蟹の場合は、この袋でなくては、買った甲斐がありませんし、値打ちも半減します。 このロウ引き加工は、江戸時代から続く古い加工方法で、水を弾く、寄せ付けないとなるとロウしか無く、 傘や蓑や袋等に使われて来ました。 江戸の傘張り浪人の作業風景として良く使われるところは、やはり最終段階のロウ引きでしょう。 ハケで塗る作業に哀愁が滲んでいます。 近代になってビニールが発明されロウ引きの需要はなくなっていますが、しかし、敢えて手持ちの封筒の中から、 蟹や魚等が出て来る驚きを生み続けるロウ引き封筒。 新たな時代の幕開けを予感させるアイテムと言えるでしょう。
(2020.6.22訂正)
蠟引きを江戸時代から続く加工と云う文章を2018年に書きました。こちらは正しくありません。蠟引き
会社の社長に注意されました。江戸時代、一般的に防水として普及していたのは、柿渋又は漆です。
傘張り浪人が塗っていたのは、柿渋。江戸時代、蝋は高級品だったようです。現在の蠟引きの蝋も石油
から造られます。よくよく考えたら、仏壇は蝋燭でしたが、一般家庭の行燈は油ランプでした。