表 裏
人の振る舞いに表と裏があるように、紙にも表と裏があります。世の流れに
浮き沈みが在るように紙の目にも流れがございます。兎角この世は住みにく
い。印刷用紙も扱いにくい。紙の生産は古来パピルス、和紙など手漉きの時
代から必ず紙には表と裏がありました。漉いた時に下になる面には、すのこ
の線の跡が付きます。3・40年前位前だと機械漉きの上質紙でも良く見る
と裏には格子状の漉目が付いていましたが、最近の物にはほとんど見分けが
付きません。でも、正確には表と裏がございます。工場から出荷される用紙
の全判は、一包100枚だったり250枚だったりありますが、基本的には上が表
になるように包んであります。断裁品が少々問題で基本的に上が表なのです
が、昔は表裏逆に包んである場合がございました。古来商品を包む場合、表
面になる方には包装紙の端や留が来ない様に注意を払っておりました。です
から包装紙を置いたら先ず中心に表裏逆にした商品を置き裏に結び目、合わ
せ目が来るように包むのが昔からの作法です。そしてひっくり返して中の商
品が上にくるようにしてお渡しします。紙屋さんでもこの作法は生きていて、
紙の納品は合わせ目の無い表が上にくる様に持ってこられますが、それを開く
時には合わせ目が上にくる様にひっくり返します。その時点で天地は逆にな
るので開いた上は裏になるのです。30年前には守られていた作法が時代の
移り変わりの中で、単に便利な方に流れ始め合わせを開いたら上が表と云う
やり方に変化し、業者によってやり方がまちまちと云う混在が始まりました。
一見表と裏の違いがはっきり判らないから厄介です。でも良く見ると違いは
あります。ファンシー系のエンボスがかかった用紙は、見分けが付きますが、
差が無い用紙は困ります。現在では包目を開いたら上が表と紙屋関係は統一
していますが、用紙以外の商品はまだ、包の合わせがある方が裏になってい
ると思います。物には何でも表と裏がありまして、人は裏表があるのは良く
ないとか云われます。表の顔と裏の顔。でもどっちも同じだと味気ない。
かといって違い過ぎると信用なりません。ほどほどの違いが味わいを生み
親近感がわき面白おかしい社会にします。表紙などでも敢えて用紙の裏表
を逆にして印刷する場合がございます。