2019年 1月からの紙の事情
本年1月より製紙メーカー各社一斉に20%の値上げを印刷・出版各社に
通達してまいりました。20%と云うのは破格で中でもいつもは値上げに
関して消極的な王子製紙さんが今回先導、大きく旗を振っておられるよう
です。併せて各製紙メーカー、再生紙の生産を取りやめる通達も在りまし
た。王子さんだけ受注生産になるようです。今の所生産中止を表明してい
ないのは、大王さんだけです。世界的なネット販売の活況で材料の古紙が
段ボールの方に持って行かれている状況と云うのは在ると思いますが、い
きなり横並びで生産中止と云うのは、ある意味を含んでいます。官公庁や
役所の印刷物廃止、ペーパーレスへの移行を本格化させる動きだと思って
います。公務員の削減と国民の完全データ化への布石でしょう。今年に入
って用紙の欠品も日常化しています。こちらは、製紙メーカー各社、工場
の縮小と人員の削減を図っているようです。また、機械が在ってもそれを
動かす人の募集に手間取るという要因もあるようです。今までの様に潤沢
にあらゆる紙のサイズを作って在庫して迅速に供給するというスタイルを
やめる方向に在るようです。ペーパーレスの波はじわりじわりと浸食し毎
年5%減で推移しています。A2コートやA3コートは10%減になる月もあ
ります。特に痛いのが日本製紙さんのb7シリーズ。こちらは人気商品なの
ですが、いつも品不足です。日本製紙さんは、8年前の東日本大震災で甚
大な被害に合われてずっと収益が圧迫した状態で古い機械に代わる物を購
入する余力が無く常に大規模な修理でその場を凌いでいます。生産力が大
きく減っているのですね。色々な要因から紙の供給が滞る状況が続いてお
ります。確かに情報主体の印刷物は、無くなる方向へ行くでしょうが、紙
でしか伝わらない言葉や心はずっとあるのです。木が良く育つ風土、人と
人とが直接結び合う身体性は日本ならではのモノです。年中災害に晒され
ているので人と人との距離がとても近い。とても親密なのです。そこを確
認し合うのが紙の文化なんですけどね。日本をガラパゴス、ガラパゴスと
揶揄する向きもありますが、この日本と云う処は大きなアナログ、一つの
身体なんだと思っています。だからデジタルで通じるかと云ったら災害復
興と同じで身体的な道具でないと信用できないのですね。我々自身が現実
とうたかたの狭間を行ったり来たりしているから。