かみのめ

山の上に立っていた一本の樹が切り倒されて製材所まで運ばれて材木に切り分けられます。樹には北向きと南向きが有って年輪を見ればどちらの面が南を向いていたか判ります。南向きは年輪の間隔が大きく、北向きにあたる部分は、間隔が狭いです。一本の木材から効率よく大きな板を採る時、どの方向にどのように切り出すかはとても重要です。年輪の幅の違いによる反りが出るからです。

丸太のままギリギリまで水の中で乾かし、板にしてからも2年3年と乾燥させます。それでも反りが出ます。樹は木材になって家や家具になって行きますが、それらの特徴を考慮しながら適性に加工されていきます。
樹を漉いて作る紙は、一旦小さく粉砕されて繊維の単位までにしますので、年輪と云うものの影響は受けませんが、漉く時の流れで紙には流れ目と云うものが出来ます。和紙をすく職人さんの作業をご覧になった事が有ると思います。上からぶら下げられた漉板を前後に揺すりますと紙の繊維は揺すられながら、前後に行儀よく整列していきます。水の流れが繊維に対して平行になるからです。この時出来る紙の目が流れ目。この出来た紙の流れ目に沿って折り加工やミシン加工、本の綴じなどを決めていきます。先ほど例に出した和紙などは普通の印刷ではあまり使いません。実際は機械漉きの用紙です。機械漉きは幅1100mmの長いマシーンが機械を漉いてロール状に紙を作って行きます。幅広い方で漉いたのが横目、狭い方の幅で漉いたのが縦目です。

紙は、折ったり、畳んだり破ったり、様々な使い方をします。大きく広げた時にも、紙自体のしなりがその持ち方に影響します。逆に身体に合わせた紙の形状が使いやすさに繋がります。効率よく紙を使い、無駄がなく使い切れる用紙の選択は重要ですが、印刷物は使う物なので、使いやすさもとても重要です。特にファンシー系の用紙は四六判横目しか作っていない場合が多いのでいつも腐心しながら、切り方を考えています。敢えて紙に印刷と云う選択肢であるからこそ、特に疎かに出来ない注意点です。