サブスクリプション化の流れ
ここ数年でよく聞くようになった言葉に「サブスクリプション」があります。
サブスクリプションは、顧客に対して継続的に価値を提供し、それによって収
益化を図るビジネスモデルです。
「サブスクリプション=定額制」ではなく、できるだけ多くの顧客にリーチす
るモデルから、顧客との関係性を強化していくビジネスモデルへの転換である
という認識も浸透してきました。
重要なことは固定的なサービスではなく、価値を継続的に提供し続けること。
顧客を正しく理解することによって長期にわたるリレーションシップを構築す
ることです。顧客の時代の新しいビジネスモデルという訳です。
このサブスクモデルがさまざまな分野に拡大し、その進展が加速してきたのに
は、主に2つの理由があります。
1つ目は、所有から利用へと顧客ニーズが変化したこと。
2つ目は、従来の製品・サービス販売モデルのままで企業が成長し続けること
が困難な時代を迎えたこと。
これらの理由により、顧客は自身のニーズを満たすため、企業はさらに成長し
続けるため、サブスクリプションモデルの存在が注目されることになりました。
言い換えると「モノが売れない時代」に対応する手段として、多くの企業がサ
ブスクリプションモデルを選択しつつあるということになります。
サブスクリプションモデルが数多くの企業から採用されるのには、当然それだ
けのメリットが存在します。顧客とのダイレクトな関係性を構築できることや、
すでに未来の売り上げが確定している状態で事業を推進していけるのは、従来
型のビジネスには見られなかった優位性と言えます。
印刷業界におけるサブスクモデルの具体例としては、アドビシステムズが有名
です。業界スタンダードのDTPソフトウェアを、パッケージ販売からクラウ
ドによるサブスクリプション販売に移行した途端に、10年以上も低迷していた
売り上げが好転した事例は各方面から称賛されています。なおアドビ社はその
後、過去最高益を更新し続けています。
サブスクリプション化の流れは、すべての業界に広がっています。定額制の動
画配信や音楽配信のような分かりやすい業態をはじめ、IoT(Internet of
things)関連事業の収益モデルもサブスクリプションが多数を占めます。また
多くの製造業も今後、サブスクモデルを開始すると見られています。さらに、
教育産業やヘルスケアビジネスなど、ほとんどの業界に拡大していくと予測さ
れています。
一方で、当然ながらサブスクリプションモデルにもデメリットは存在します。
利用者にとっては使わなくても料金が発生するので、導入してみたものの活用
せずに解約に至るケースが多いようです。提供側にとっては、契約時に未来の
売り上げが確定している反面、解約時に未来の損失が確定することになります。
サブスクリプションモデルが主流の時代を迎えることが予想される現在、私た
ちは消費者としてもビジネスプレーヤーとしても、大きな変化の始まりを目の
当たりにすることになるでしょう。
「日本サブスクリプションビジネス大賞2019」表彰式の様子
グランプリは子どもの成長と月齢に合わせたおもちゃや知育玩具を隔月で届ける
レンタルサービス「トイサブ!」が受賞。現在の利用家庭は2200世帯を超える。