HAPTIC

竹尾の用紙サンプル帳「HAPTIC」は、触覚的な触覚を喜ばせる素材

が多数収録されています。NTスフール、パチカ、桃はだ、プライク、く

びき。どれも、触ったときの感触は独特でヌメッとしていたり、ベルベッ

トだったり、しっとりしていたり、指が喜ぶ肌触り、身体性の強い用紙です。

スマホやモニターを日常的に使いこなし、常に視覚からの情報収集の世界で

は、目と頭が直結してしまいそこだけで世界が認識されると他の知覚感覚は

使われていないのでどこか、情報の質そのものがゆがんでくる感覚が有りま

す。現実性が無くなり、認識されるけど記憶されない、バーチャルな世界。

そこを補う為に五感全てを使って記憶する。パチカは特にモフモフ感が強い

紙ですが、加熱型押しした処が透明になる面白い用紙です。モフモフなとこ

ろと加熱型押した処の差のコントラストが強く立体的になるためより身体性

が強く、指たちの歓喜の歌声が聞こえてきそうな肌触りです。指たちが喜ぶ

質感ですが、加工や印刷、製本は特に注意が必要です。加熱型押しでは銅製

の腐食版を使用し、プレスの温度と時間は、150度で1~6秒長く押せば押す

ほど透明度は高まります。印刷の場合は、表面がソフトなのでインキのタッ

クを落として印圧は最小限。紙粉は落ちます。落ちます。拭いても拭いても

落ちます。断裁の際には厚めの当て紙が必要です。用紙の中では最高級の価

格ですが、だからこそ使い出のある用紙です。大きなテキスト部分を加熱型

押しして透明にして、すぐ下の紙に大きな画像を配置すると透明なところが

透るので、全体的には想像力が掻き立てられるイメージになります。パチカ

に似た加熱型押しの紙でOKフロートと云うものがございます。こちらはカラ

ー16色ありまして濃い色から薄い色まで取りそろえ、斤量も63Kgから210Kg

まで使いやすいラインナップ。白い合成パルプをちりばめた高級感のある風

合いですが、パチカの様な透明感はありません。加熱型押しで表面の濃淡を

変化させます。まだ誰もやったことが無い装幀を一つ披露いたしましょう。

本の形は上製本、角背、本文PUR固めフォローバック。上製本のチップボー

ル2mmにイメージ写真を合紙します。表Ⅰと背と表4に切り分けます。

表紙はパチカ130Kg。これを上製本の表紙に貼り付けて表紙と背のタイ

トルと名前の部分を加熱型押しします。型は大きくなればなるほど高くな

りますが、それでもフォントなどを大きく太くして下地を透けさせれば素

敵なイメージになります。