水を絞る
オフセット印刷は水を使います。水と油の反発しあう特性を生かして、画像を
作っています。ザラザラの砂目状の版(目では認知できない微細さ)の上に親
水性の部分と親油性の部分を作り、インキ(油で出来ています)が載る親油性
の部分で画像を(イメージ)を作り、ブランケット胴(ゴム胴)に転写し次に
紙に転写します。これが基本的なオフセット印刷の原理です。この時水は少な
ければ少ないほど、インキの量も少なくて済みます。パウダーも少なくて済み
ますし、後加工のスピード化も計れます。水が多いとインキを多く使うことに
なりますが、インキが多い割に仕上がりは浅く平板なイメージになります。オ
ンデマンド印刷は水を使わずトナー顔料だけの塗布で印刷しますので、発色が
良く色も鮮やかです。オフセット印刷は真ん丸の丸点100が水の仕様と転写、転
写で97位になるのに比べて、オンデマンド印刷はトナーの飛散や顔料の濃さで
100が103位に太ります。濃くなった分鮮やかですし、印刷が力強いです。これは
オンデマンド用とオフセット用でデータを作成するときに注意すべき点です。水
を絞ることはオフセット印刷の基本中の基本ですが、オンデマンドとの比較も時
代の要請として、更なる低保水性が求められている所だろうと思います。やはり
オンデマンドはビビッドな発色が持ち味です。アグファ、コダック、フジの無処
理ケミカル版は、時代の要請にこたえた版です。現像しない事によって安定した
ムラの無い画像を再現します。尚且つ版上に少量の水しか保水できないため、適
切なインキの量しか版の上には載ることが出来ません。つまりデータ通りの印刷
結果が得られます。特にアグファさんのアズーラと云うケミカル版は、極限まで
水巾狭くしているので、もうデータ通りのインキ量でないと刷れないというレベ
ルです。印刷機やオペレーターにとっては極端にストレスの係る印刷となります
が、印刷結果は校正通り、またはデータ通りの仕上がりとなります。ハイレベル
な技術を持ったところでなくては出来ない印刷です。オフセット印刷の主流にな
りつつある流れです。アナログレコードがCDプレーヤーになって、音がスカスカ
になりました。フィルム写真がデジタルカメラになって写真の奥行や重厚さが消
えてしまいました。印刷業界でもフィルム刷版がデジタルプレートになって、浅
くて淡い画像になってしまいました。勿論ドットゲインを上げたり、高精細にす
ることによって補う努力はしています。それらのマイナス面を補う為にラフグロ
ス用紙や微塗工の嵩高ラフ用紙の流行があるように思います。イニュニックが
UV印刷にしているのはインキを盛るためです。盛ると厚みは出ます。ラフ書籍を
盛って暗部を少し潰し気味にする事によって画像が締まります。無処理版は総じ
て保水性が低いゆえに、水巾が狭く水幅の狭さがインキ幅の狭さを生んでいるの
ですが、あまり盛ることが出来ません。この辺がイニュニックの課題と云える
ところです。