青木真理子シンドローム

本屋に入るとトイレに行きたく現象を「青木真理子現象」と云います。

古本屋より新刊書店、新刊書店より印刷や。トイレに行きたくなる原因

はインキの中に入っている便意を催す成分が含まれているのではないか

と云うのが通説になっておりましたが科学的根拠は無いようです。私ど

も印刷屋の立場から申しますとインキの中に便意を催す成分が入ってい

るとするといつもトイレにばかり行って仕事にならない。でも私自身の

ことでは、印刷屋に勤め始めたころには、いつも出社すると便意を催し

てトイレに行ったおりました。理由ははっきり分かりませんが、会社の

独特の印刷屋の匂いを嗅ぐとなぜか行きたくなるのです。朝家で排便を

しないで出かけるので会社に着いて丁度そのタイミングになるだけかも

しれません。社員を見ていますとそのようなことは無さそうですので、

あくまで個人的なことかもしれません。「膨大な量の活字に囲まれる

プレッシャーによる過敏性腸症候群の一種」という意見などもあり理由

は、はっきり判らないと云うのが一般論だそうです。アメリカ人にも同

じような現象があるそうです。言葉や情報と云うのは本来、「毒」なの

でしょうか?毒に対する身体的条件反射。印刷屋がそんなこと言うたら

あきませんわなー。薬やと思うて一生懸命読んだり刷ったりしておりま

すが、強ちそうとも言えないんじゃないかと考えたりします。言葉や観

念や情報が吾々を縛り不自由にしている面もあります。仏教で云ったら

知恵と云うのは般若の事で般若と云ったら鬼のような顔をしています。

エデンの園でアダムとイヴが食べたりんごは知恵を現しているのです。

ところで本屋でうんこが何故、青木真理子なのでしょうか?この方が

この現象を歴史上初めて、その経験則を持って概念化した方なのです。

時は1985年4月の事ですからそれほど古い事ではありませんし、

日本のうら若き女性のようです。1985年4月20日「本の雑誌」

41号。この前の号に青木真理子さんからの投書ハガキに「本屋に行く

とうんこがしたくなって困る」という報告がなされ翌月の特集に発展し

大いなる同意賛意を持って概念化された現象なのであります。書店の

トイレの案内表示を「トイレ」から「青木真理子」に変更と云う動き

も無きにしも非ずでしたが、これは同姓同名の青木真理子さんからの

抗議で退けられ、ご名誉は守られた次第で御座います。(最後の方フ

ィクションを含みます。)