イニュ箔押研究所

■ 1. 箔押しの歴史
● 起源
箔押しのルーツは古代エジプトやギリシャにさかのぼります。
当時は「金箔」を直接手作業で貼り付ける方法が用いられ、主に宗教書や装飾品、
聖像などに使われました。金属の輝き=神聖さ・権威の象徴という文化的背景が
ありました。
● ヨーロッパでの発展
15〜16世紀、ヨーロッパで印刷技術(グーテンベルク以降)が広まると、書籍の
装丁や聖書の表紙に金箔を押す技術が発展します。
これが現在の「箔押し装丁(ホットスタンピング)」の原型です。
当初は革装丁の書籍に、真鍮製の型(版)を加熱して押し当て、金箔を転写して
いました。
● 日本での普及
日本では江戸時代の「金箔押し」が寺院や仏具の装飾から始まり、明治以降、活版
印刷技術の導入とともに産業としての箔押しが発展しました。
昭和期にはパッケージや文具、名刺などに広く使われるようになり、現在では「ホ
ットスタンピング」「コールド箔」「デジタル箔」など多様な手法があります。
■ 2. 箔押しの用途
箔押しは「装飾性」と「付加価値向上」を目的に、さまざまな分野で使われます。
分野 用途の例 効果
書籍・製本 表紙タイトル・背表紙装飾 高級感、上製本の品格
パッケージ 化粧品・お菓子・ブランド商品箱 高級感、ブランドの差別化
名刺・カード ロゴ・社名・デザイン要素 信頼感、印象的な仕上がり
招待状・証書 文字・紋章など 格式・特別感
家具・雑貨 レザー製品や紙小物の装飾 高品質な印象づけ
■ 3. 箔押しの種類
ホットスタンピング(熱圧式)→ 金属版を加熱し、熱と圧力で箔を転写。
長所:光沢が美しく、耐久性が高い
短所:版代がかかる、少部数には不向き
コールド箔(UV転写)→ 接着剤(UVインキ)で箔を定着。熱を使わない。
長所:高速印刷機対応、細かい模様も可能
短所:ホット箔より輝きはやや控えめ
デジタル箔(オンデマンド対応)→ トナーや特殊フィルムを利用し、版なしで
箔押し可能。
長所:小ロット対応、版代不要
短所:種類や箔の輝きに制限あり
■ 4. 箔押しの効率的な使用法
●(1)コストバランスを考える
版代(数千〜2万円ほど)+加工費が必要なため、少部数ならデジタル箔、
中〜大部数ならホット箔が合理的です。
版を流用できるデザイン(ロゴやタイトルのみなど)にしておくとコスパが
良いです。
●(2)紙質との相性
箔押しは「平滑な紙」ほどきれいに転写されます。
例:アラベールやヴァンヌーボなどのややざらついた紙は箔ムラが出やすい。
表面加工(PP貼りやラミネート)をした上から箔押しする場合は、素材に
対応した箔を選ぶ必要があります。
●(3)デザインの工夫
細線や小文字はつぶれやすいため、0.3pt以上の線幅が目安。
光沢金・銀以外にも、マット箔・ホログラム箔・カラー箔を効果的に使うと、
控えめながら印象的な仕上がりになります。
他の加工(エンボス、デボス、UV印刷など)と組み合わせると立体感が増
します。
■ 5. まとめ
観点 ポイント
歴史 書籍・宗教美術から発展した装飾技術
現代用途 書籍・名刺・パッケージなど幅広く活用
種類 ホット・コールド・デジタル箔の3系統
効率的運用 ロット数・紙質・デザインを考慮して選択
効果 高級感、ブランド価値の向上、印象的な演出
特徴・使いどころ:伝統的なホットスタンプ型式(熱+金属版)に強みを持
つようなので、書籍の表紙、装丁物、高級パッケージなど"版を起こして
複数部作る"用途に適している可能性があります。利用のヒント:仕様
(用紙・箔の種類・部数・サイズ)を早めに伝えて、版代/工程的制約を
確認すると良いです。
箔商社には、村田金箔さん、田中考商店さん、クルツジャパンさん。
イニュニックは、村田金箔さんの「いろだるま」クルツジャパンさんのホロ
グラム箔をメインに扱っています。

「オンデマンド特殊印刷」で、版を必要とせず少部数・多種類対応で「金・ク
リア印刷」ができるというサービスの案内があります。箔押しそのものでは無い
場合も含まれますが、少部数で"箔っぽさ/メタリック風"を求める際に候補と
なります。特徴・使いどころ:版代を抑えたい/多品種少部数/短納期を重視す
る場合に適。真の「金属版+箔」ではなく「印刷で金属調」な場合もあるため、
目的に応じて使い分けると良いです。箔そのものは村田さんやクルツさんの箔と
同じです。オンデマンドトナーに反応する箔押し技術となります。力で押さない
ので凹みはありません。コート、アートポスト等の平滑度の高い用紙がメインと
なります。ファンシー系のテクスチャーのある用紙はカスレや剥がれなどの問題が
起こる場合があります。
利用のヒント:「箔押し」と「金印刷(メタリック印刷)」は異なる加工なので、
「本当に箔を転写したい」のか、「金属調に見せたい」のかを明確にして仕様を
確認してください。版の有無・版代の有無:ホット箔押しでは金属版が必要とな
るため、初期費用がかかります。部数・ロット感:少部数(数十〜数百部)であ
ればオンデマンド式・セルフ式・版不要型がコスト・納期とも有利。
用紙・素材との相性:ざらついた紙・PP加工された紙・特殊紙では箔の定着・転写
が難しいことがあります。たとえば、「オンデマンドトナーの上への箔押しは不可」
という場合もありますが、確認が必要です。オンデマンド印刷のトナーは200度で
定着させていますが、箔押しは100度から120度の範囲で熱転写しますのでその時に
オンデマンドトナーが剥がれたりしますので熱転写温度を下げたりする工夫が必要
です。しかしデボス加工は、間に転写する箔がないのでダイレクトにトナーが剥が
れます。その場合熱無しで力だけで凹ませることになります。押しが弱くなります。
仕様範囲(箔面積・サイズ):業者によって「○c㎡以内なら定額」「超えると加算」
という条件があるので、デザイン時に把握しておくとコスト抑制できます。
納期・色数・加工併用:箔押し+エンボス・デボス・PP貼りなど複合加工を行うと
工程・納期・費用が増えます。事前に工程確認をしてください。

活用デザイン上のポイント
ロゴ・タイトル・一部アクセントに箔を使うことで"印象点"を作る。全部に使うと
コスト・印刷バランスが悪くなることも。細い線・小さい文字は箔押しではつぶれや
すいため、0.3pt以上の線幅・最小文字サイズを確保することが望ましいです。
素材との相性を意識:紙がざらつき・凹凸が多い・表面加工がある(PP・ラミ)場合、
箔が均一に転写されないリスクあり。事前にサンプル確認を。
色箔・ホログラム箔・マット箔など多様な選択肢あり。例えばホログラムを使えば
"イベント限定感"、マット箔なら落ち着いた高級感。
加工併用例:箔押し+エンボス(浮き出し)→立体感・影が出てさらに高級感が増す。
加工数が増えるほどコスト・納期も増加。
名刺/ショップカード:箔をロゴだけに使って、他はシンプルに。名刺交換時の印象
を強く。書籍表紙・製本物:表紙タイトルや背表紙に金箔を使うことで"質"を高める。
パッケージ・ギフト箱:ブランドロゴや商品名、ライン枠などに箔を使うことで店頭・
ギフト用途で映える。同人誌・限定版アイテム:少部数でも"特別仕様"として箔+
特殊紙などを使うことで付加価値を出せる。
③ 小ロット向けオンデマンド箔加工の具体例・効率化ポイント
少部数・多種類・短納期で箔を使いたい場合、効率的に進めるための方法とサービス例
を挙げます。
◆ 効率化ポイント
版を使わない方式 or最小版方式を選ぶ
 版代・版起こし時間を省くことで初期コスト・納期を抑えられます。例えば「版不要」
「オンデマンド金印刷」など。 ← 例:オンデマンド特殊印刷で「版を必要とせず、少
部数(A4換算200枚程度・最低3万円~)」という案内があります。
面積・範囲を小さめに設計する 箔押しの面積が大きいほど加工コストが高くなる可能性
あり。タイトルやロゴ部分など"アクセント"に絞る設計が効果的。
用紙・素材を整える
 ざらつき・粗面・表面加工が過度な紙は箔の転写精度が落ちるため、可能なら「平滑/
少表面加工」の紙を選定。また、テスト印刷・箔見本確認がおすすめ。
先行仕様決定&データ作成を明確にする
 箔色・箔位置・範囲・用紙種類・加工併用(PP・エンボス等)を仕様書にまとめて、
印刷会社との打ち合わせ時に「少ロット対応可」「納期」「見本あり」を確認。
多品種少部数対応サービスを活用する