活版印刷
鉛や錫で作った金属活字を組み、凸部にインキを着けて印刷する方式を活版印刷と云います。昔ながらのレトロな風合いが人気です。名刺を交換すると大体皆さん活版印刷です。亜鉛や銅、樹脂版で絵や文字の凸判を使って印刷するのが、凸版印刷です。もっとも古い歴史を持ち、グウテンベルクの活版印刷の大元になったのが、韓国の木版です。日本に渡ってきて浮世絵などの版木となりました。印刷の初期段階のものですが、広く使われたものなので、各国に長い歴史があり、それぞれに発展し文化としてしっかり残ることが出来ました。しかし、近年のオフセット印刷の発展により衰退の進捗著しく、廃業する業者も多いのでますます、寂れていく技術となっています。しかしだからこそ、デジタル時代の今、皆さんに人気の印刷文化となっています。ヨーロッパの若者にも大人気で、中には活版の技術を受け継ごうと云う若い方たちの動きもあります。オフセット印刷に比べると組版代のコストは掛かります。時間も掛かります。たとえばオフセットは、現在1時間で最高18,000枚位印刷できますが、 活版印刷は、一日で1,000枚ぐらいしか印刷できません。先日活版屋さんに行って、話をしていたら今週は、角2の封筒を5,000枚、五日掛かりで印刷していたと話されていました。「それで金額いくらですか?」と聞くと10,000円。日当に換算すると一日、2,000円です。昭和40年代の日当ですね。もう一つの時間が、インキが遅乾性のインキを使っているので乾くのに時間が掛かるという事です。活版印刷の良さは、インキが濃いという事。で尚且つ乾きが悪いので、納期は長めにしなくてはいけません。今頼んでいる活版屋さんはハイデルベルグのプラテン機を使っています。1965年のモノ。職人さんは70歳を超えているので引退したら、機械と活字譲ってもらう手筈が付いています。私自身、色々な機械を回して来たので印刷機その物は、操作することは出来ると思いますが、活版印刷の肝は、文選と植字です。これが難しい。それから、0.25mmの板木から0.5mm、1mm、2mmのものを組み合わせながら作る、組み付け。金属や樹脂版の凸版は、さほど難しくありません。型に組み付ければ良いだけですから。しかし活版印刷のアジ、風合いと云えば活字組版ですね。一つ一つの活字を組みあわせながら、レイアウト、行間、余白を計算して組み付けていく。活版印刷の一番難しいところもここです。活字屋さんに組み付けて貰ったのを買うと云う手もあるのですが、それでは本当の意味での活版印刷ではありません。創られた工程すべて含めて活版印刷物なのです。