PUR製本
強くて良く開く本、絵本や楽譜、教科書、料理本等、無線綴じでありながら
良く開く本を作りたい場合、PUR製本があります。開きやすい本となると、
中綴じ製本か、糸かがり製本しかありませんでした。中綴じ製本にはページ
数の制約があり多くのページでは無理でした。又、糸かがりとなると、16ペ
ージ折りや8ページ折りの多面付オフセット印刷をしなければならず、印刷代
のコストが上昇する問題点がありました。PURとは、反応性ポリウレタン系ホ
ットメルト接着剤の事です。建築系、内装材系等で良く使われていた接着剤で
すが、環境に優しく、丈夫で柔らかく、耐熱性に優れ印刷インキとの相性も良
いので、近年製本糊として使われるようになりました。従来のタイプのエヴァ
糊と比較すると、良い事ずくめの製本糊に思えますが、コストと手間がかかり
ます。製本工程のスケジュール管理が重要です。一度熱して溶かした糊は使用
後は、破棄します。又、経時劣化が激しく、短時間で、ブックバインディング
しなければなりませんが、糊そのものは、長い時間をかけて固まって行く為、
表紙と本文が接着した時点では、強度と開き加減を確認する事が難しいと言う
難点があります。本は開けば良いかと言いますと一概にそうとも言いきれず、
見開きページで黒い写真が配置してある場合、中心が開きすぎると、白い糊の
部分が見えてしまいます。これは綺麗ではありません。余白がたっぷりある本
だとぎりぎりまで糊を薄くして、良く開くように調整しても問題ありませんが、
絵本や写真集の場合は、そこの見極めが大切です。PUR製本が効果を発揮するの
は、オンデマンドで印刷した写真集やイラスト集です。水と油が紙に染み込む
オフセット印刷は、印刷後に紙の強度の変化が起きる事はありませんが、オン
デマンド印刷では変わります。オンデマンド印刷はトナーを紙に塗布して200
度ぐらいの熱で固めます。インキ濃度の高い写真集などの場合、両面にその
ような加工が施される為、普通のオフセット印刷に較べて、ハリが出て、固
い紙に変化します。そちらをエヴァ糊で固めると開きの悪い本になります。
またインキ濃度の高いノドをミーリングするとは言えエヴァ糊で接着するには、
容易に糊が染み込まず、ページが取れたり、本がばらける事故が起きる事が
ありました。PUR製本では、オンデマンド印刷の短所が、カバーされ、より
柔らかいしなやかな本に生まれ変わるのです。