凸版印刷・活版印刷

昔、印刷会社に就職して現場に入って間もない頃、会社はオフセット印刷でしたが、印刷種類の説明で、教わったのが、 印刷には、オフセット印刷、孔版印刷、凹版印刷、凸版印刷などがあり、それぞれの中に、フレキソ印刷、ダンボール印刷、凸版輪転印刷、枚葉オフセット印刷、軽オフセット印刷、 グラビア印刷、銅版印刷、スクリーン印刷、謄写版印刷、デジタル孔版印刷、バーコ印刷などと、機械の違い、方法の違い、素材の違いで、色々な方法があると言う事でした。

古い印刷方法で、当時も人気が有ったのは、活版印刷。詩人達は、活字で組んだ版で、詩集を出すのが、当時も憧れでした。活版印刷は、活字で組んだ文字を印刷します。 活版活字は、明朝やゴシック、正楷、教楷、清朝、宋朝、隷書、行書、草書などがあります。 私の名刺は、加賀Aクラフトボール(厚さ0.8mm)に活版活字で印刷しております。書体は、明朝。 名刺の印刷ですと、清朝、宋朝、隷書等が、金額はさほど、かからないで、昔のレトロな名刺が、作れます。上記清朝で、詩集を作るのは、お金がかかりすぎて現在の日本では、無理です。 オフセット印刷に圧されて、どんどん廃業していたところで、4年前の東日本大震災。あの地震で、2/3以上の活版印刷屋さんがやめていきました。 活版屋さんの活字は、壁に貼り付けられた棚板に何十万という活字を整理して入れていました。それらがあの地震でほとんど下に落ちました。活字は鉛・錫で作られていました。 柔い素材ですので少しの衝撃で傷ついて使えなくなりました。活版印刷屋さんにとって活字は財産でした。膨大なる地域の歴史の堆積が、失われてしまいました。

現在作製できる詩集の可能性としては、原稿を組版指定して、中国か台湾の業者に紙型を作って貰って日本に送り返して貰い、 そこから亜鉛版を作って、活版印刷するというのが、活版印刷の詩集の可能性ですが、鉛活字でないと言う所が、少し趣きを損ないます。 活版印刷の利点、短所は、その活字そのものにあるのです。膨大な量の活字を用意しなければならない、その事の無駄さ加減が、その詩集の言葉の価値を高めています。 デジタルフォントで、清朝、宋朝等の書体はあります。文字組みをした後、ある一方向に判るか判らないか位の影をつけるといかにもな活版印刷が、出来上ります。 でも本当の意味の価値は、目に見えない、その裏に隠された活字の形にあるのです。

ちなみに、凸版印刷とは、機械は同じなのですが、フィルムから作った樹脂版、亜鉛版を使って印刷する事を言います。 活字という制約がありませんから、フォントも絵柄も自在に作れます。 圧をかけて、わざと凹ませたり、滲ませてと言う要望がありますが、イニュニックでお願いしている印刷屋さんは、イヤがります。