ダブルトーン
フィルムのアナログ時代には、写真集の制作でダブルトーンはよく使われた手法です。
スミ1色では写真の紙焼きのような深みが出ないので、補助的にもう1色、グレー版などを作って2色刷りで印刷することによって、モノクロ写真に深みと厚みを出す手法です。
スミ版+グレー版、スミ版+グレー版+濃いグレー版、スミ版+グレー版+シルバー版など、銀色を使うこともありました。大雑把にこれら全てを「ダブルトーン」等と呼んでおりました。ダブルトーンのアナログ写真製版では、ハイコントラストの主版をスミで刷り、ハイライト寄りの中間色をグレーで刷る方法が一般的です。アナログ版時代、175線のフィルムとアナログ刷版の露光制御では細かい階調に限界が有り、それを補う為に考え出された印刷方法だと思われます。ディジタル時代の版の作り方としては、まずグレースケール画像の一つを主版として、コントラストを高めて、シャープネスをかけて、少し輪郭を際立たせます。こちらがスミ版。同じグレースケール画像で、今度は中間色重視の版を作ります。こちらはグレー版。このグレー版は、スミの主版に対して少し角度を変えて印刷します。スミ版の白いところにグレーが入って来ますので、このグレーインキを濃く設定したり、濃い版を作ったりすると真っ黒の写真集になってしまいます。そこは、本機校正をして色の確認を何度も行う必要があります。
最近のディジタル印刷した写真集「A Life with Camera」上田義彦写真集は、全部FMスクリーンで印刷しています。モノクロ写真はFMスクリーン20μのダブルトーン画像。これはやりすぎだと思います。アナログ時代の階調補助の様な技法を、ディジタルのFMスクリーン(AM換算で500線以上)でやるとすれば、グレー版の中間色は相当飛ばしておかなければいけません。暗いばかりの写真になってしまいます。基本的に、AM300線、FMスクリーンの時代には、ダブルトーンはあまり使えない技術かも知れません。フォトショップで大抵の画像は作れますし、CTP刷版も印刷機もそれなりの高レベルな作業技術に応えられるようになっています。ただ、モノクロ写真を4色分解で印刷する場合があります。やはり綺麗です。スミ100%のアミ点の間を、シアン、マゼンタ、イエローが、1%以下の細かさで埋めてくれますので、それなりに階調も上がり深みが出ますが、色転びも出やすいので少し難しいです。
ダブルトーンは、印刷屋との連携と多くの経験がものを言う技術ですので、行うとしたら信頼できる印刷屋に相談する事が必要です。