ラフ嵩高用紙の印刷
紙らしさ、柔らかさ、軽さ、しなやかさ、どれを取っても紙本来の要素を兼ね備えた大人気の用紙「ラフ嵩高用紙」、 お客様にご提案するとほとんどの方々にご賛同頂きます。
さてこの「ラフ嵩高用紙」ですが、テクスチャー、風合い、存在感は、申し分無いのですが、印刷仕上りに少し難があります。 嵩高用紙には、非塗工紙と微塗工紙が有ります。塗工していない用紙と、少しだけ塗工した用紙と言う意味です。 コート剤(炭酸カルシウムとデンプンなどを混合して作ります)を、用紙の表面に、コーターで塗布する事に依って 美しさや平滑さを高め、着色効果、インキののり、光沢感を出します。 アート紙は、上級印刷用紙に、40g/㎡前後使用して有り、高級カタログやカレンダー等に使用されます。 コート紙は、20g/㎡~40g/㎡ぐらいコート剤を塗工した用紙。軽量コート紙で、15g/㎡ぐらいで、主にチラシ等で使われます。
さて、嵩高用紙等に主に塗布される微塗工紙で、12g/㎡以下に設定されています。 多く塗工すればするほど、紙の風合いは無くなりますが、印刷は綺麗に仕上がります。 女性の化粧と同じで、塗れば塗る程綺麗になりますが、女性本来の素朴さや、優しさは消えて行きます。 そこで登場するのが、ラフ嵩高微塗工紙です。限り無く素っぴんに近いけど、女性本来の美しさを、引き立てている感じ。 この嵩高紙に印刷した時に生じるのが、粗さです。表面が凸凹しているので、しょうがありません。 もう一つの欠点が、乾きの悪さです。
まず最初の粗さに関しては、データで補う事が出来ます。 印刷の仕上りが少しぼんやりするので、少し強くコントラストを上げます。印刷のツブレによって、全体的なトーンが、暗くなるので、中間色を少し明るくします。 そしてここが、キモですが、少し強すぎるぐらいシャープネスをかけます。これで、ラフ嵩高用紙の欠点は、ほとんどカバーできます。 モニターや液晶の美しさが、一つの形として出来上っているので、紙に求められている要請は、画像の美しさでは、なくなっています。 手から手へ伝えて行く、紙本来の手触り風合いです。そこが印刷メディアの生き残っていける道です。 もう一つの欠点の乾きの悪さは、ゆっくり時間をかけて作業するしか無いのですが、イニュニックでは、速乾の印刷技術、UV印刷を導入しています。 UV印刷は、インキの中に特殊な材料を入れて、紫外線によって硬化するようにしており、排紙台の上に出て来た時には、乾いた状態になっています。なので、すぐに製本加工が出来ます。
印刷の世界が、アナログからディジタルに移行した時に起ったのは、印刷仕上りの軽さでした。これは、ちょうどカメラが、フィルムからディジタルに移行した時と重なります。 この時満を持して行った、印刷工程のディジタル化に激震が走りました。重み、深み、濃さ全てが消えてしまったのです。 しかし、ディジタル加工の技術によって、印刷物の美しさや、精細さは、昔の水準を遥かに超える事になりましたが、取り戻せていないのが、紙にのったインキの味です。 網点と網点の間に有るアジ。たぶんこれを埋めるのが、ラフ嵩高用紙のツブレなのでは、ないかと考えています。