芥川賞、直木賞 本文用紙

今回ノミネートされている芥川賞5作品の単行本の本文用紙の紙の情報が

もたらされました。岡本学「アウア・エイジ」が中越パルプの「ソリスト

N65.5K」石原燃「赤い砂を蹴る」も「ソリストN75K」高山羽根子「首

里の馬」は日本製紙の「オペラクリアマックス73K」遠野遥「破局」も

「オペラホワイトマックス73K」三木三奈「アキちゃん」が王子製紙の

「OKプリンセス73K」 直木賞も「じんかん」が「ソリストN」「能楽

ものがたり稚児桜」が「OKプリンセス」「雲を紡ぐ」が「オペラクリー

ムHO」「銀花の蔵」が「アルトクリームマックス」「少年と犬」が「三

菱嵩高書籍」となっております。昔まだこれらの評判になった本が何十万

部、百万部と読まれていた時代は、本文紙は別製で抄紙していました。

作品世界を丹念に反映した用紙を単独に作っていました。大体現在で一回の

抄紙で創る紙の最低ロットは約400連です。300ページの本10万部で4

00連使います。何十万部の本となると別製で紙を漉く事が出来ます。です

から昔は、本を読みながらこの紙は何かなと云う疑問すら持ち得ませんでし

た。それが今は、芥川賞で初版5000部です。直木賞で5千から4万部で

す。どうしても既成のメーカー紙を使わざる得ません。紙の名前が判って、

親しみが湧くのは確かですが、作品の理解がより深まるかと云えば、そんな

事ある訳も無く、作品内容が全てと云うのが私の基本的なスタンス。拘りの

装幀印刷屋を標榜してしている身としては、裂けても云えないセリフではあ

りますが、本音と云えば本音です。しかしこれはあくまでも文字フォントの

文章だからの事。実際に「淡クリームキンマリ」と「オペラホワイトマック

ス」では全然別の表情で在り、そこは作品内容とリンクさせますね。画像や

カラーとなりますとここは、紙の選択はとても重要な処でここの選択を間違

えると全てが台無しになる事が在ります。残念な印刷物、かっこいい印刷物

ここを大きく分けるのは印刷所の選択ではありません。金額の選択でもあり

ません。紙の選択と刷り方の技術です。