無処理版CTP出力

オフセット印刷で版となるものは、アルミの板にインキが載る画像部とイ

ンキが載らない非画像部を作ります。高低差数ミクロンの差ではあります

が、高さの違いもありますが、大きな違いは親油性の部分と親水性の部分

を作ってインキと水で版の上に画像を作ります。CTPになる前のアナログ製

版の時代には印刷部のフィルムを出力して版の上に重ねて露光することによ

って定着させ、そのあと現像液で現像して版を作っていました。現在ではフ

ィルムは使わずレーザーで版の上に直接画像を焼き込み、現像と云う方法が

一般的でした。10年前から試行錯誤のあった無処理版のCTP出力。今年にな

ってやっと安定した出力が実現してイニュニックでも使用するようになりまし

た。無処理版CTP出力は長年の夢でした。現像液で処理する刷版では現像液を

使うので環境負荷が強い方法です。劣化した現像液は廃液処理することになり、

自然に戻すためにはある程度のコストを掛けなければなりませんでした。10年

前導入に躊躇ったのは、刷り上がりの質でした。保水力が弱いせいでインキを

盛ることが出来ず質の悪い印刷しか出来ませんでした。環境にやさしい印刷屋

を標榜してずっとサービスを続けてきたイニュニックでは、ありましたがまとも

な印刷が出来ないレベルでは、それは商売そのものに影響します。ずっと待ち続

けていました。現像タイプに対して無処理版は、親水性がずっと下がります。浅

いので保水性が下がるためです。保水性が下がるという事は、水とインキのバラ

ンスが取れる範囲が狭くなるという事で、それはある意味ちゃんと刷れればデー

タに近い印刷が出来るという事、正しい色で印刷が上がって来るという事です。

去年からコダックで試験を始めていて、6月からフジフィルムの版で試験を行っ

ています。概ね順調です。平アミが均一に出るので斑が出ません。現像しないの

で現像カスが着く事もありません。問題はH-UVの印刷機での耐刷性。未だ2万枚

位しか成功していません。柔らかいインキに変えるという選択肢もありますが、

印刷のレベルを落とすことは出来ませんので、H液を変えたりニップ幅を弄った

りと試行錯誤中です。(2017.6.23)