【かがり糸】
糸かがり。頁物を製本するとき、通常は並製でEva糊、PUR糊で背を固めて
製本しますが、開きの悪さ、強度の点で不安がある時は、糸かがりで製本
します。8ページ、16ページに折って背中を糸でかがって行きます。中
心に糸を通してしっかりかがりますので、強度はとても上がります。上製
本の場合はハードカバーですので開きやすくするために糸かがりにする場
合が多いです。イニュニックではPUR製本もお勧めしているので本文をPUR
で固めてフォローバックでハードカバーと接着させる仕上がりも行ってい
ます。安くて速く出来ます。特にオンデマンド印刷の場合は、折らないで
ペラで帳合しながら印刷しますのでPURで固める方法しかありません。
8ページ折りと云うのは本文用紙が厚いと4つ折りしか出来ないので8ペ
ージで折るのですが、あまりページ数が多いと糸の分量が増える為ノドと
小口の高さが大きく変わってきますので、こちらもあまりお勧めできない
仕様です。200ページ越えると厳しくなります。丸背を造る場合も糸か
がりが必要です。少部数でかがらないで折りだけで、丸背を造るやり方も
ありますが、少々仕上がりに難があり、美しい製本と云うイメージでは無
いです。コデックス装も糸かがりは必須で糸でかがっていない物はコデッ
クス装とは言えません。コデックス装の気軽さから糸もカラフルな物をお
求めのご要望も良くあります。糸は殆んどの色が選択できると思います。
糸の見本帳は、中々貸して貰えないのですが、一度見た限りでは1000
種類ぐらいの色数が有りました。ただ、カラー糸は少し細くて弱いような
印象がありました。かっこいいのが釣糸のような透明糸、少し高いですが
ちょっとカッコイイ。
【コデックス装】
コデックス装はチープさと武骨さが両方あり、剥き出しの背には色糸が見え、
製本途中で投げ出したような粗々しさが、魅力的な製本方法です。なんと云っ
ても180度本が開くので見やすく、手を放してもそのままです。上製本の製造
工程の途中で完成させたもので早く読んでほしくてたまらない感が溢れていま
す。一般に上製本は印刷した本文(16P折り、8P折り)を帳合して、糸で本文の
順番に糸でかがって行きます。この後、寒冷紗を付け、花布を付け、スピンを
付け、表紙を付けて完成させます。コデックス装の場合は、糸でかがった後に
背固めして3方を化粧断裁すれば完成です。表紙を付ける場合は先に見返しを
頭とお尻に張り付けておきます。そして見返しに表紙を貼り合わせて3方を断
裁します。一般に表紙は厚めです。イニュニックの場合は大体とても厚いもの
をお勧めします。その方がよりインパクトが増すからです。イニュニックで定
期的にお創りしている「コンタクトハイジン」は、2mmボールを2枚合紙して
それに印刷表紙を貼り合わせるので、4mm以上の厚さになります。開きが良い
ので額装も用意され日替わりフォトスタンドとして活用されています。綴じ糸
は様々な色があります。白赤黄緑青黒透明などなど。常備在庫してあるものと、
取り寄せで時間がかかるものもあります。当然コストもかかります。かがりは
1折から最終折まで通してかがりますので、台ごとに糸の色を変えることは出来
ませんが、ボビン毎に糸の色を変えることは出来ます。1色が2列になりますの
で2列ごとに色が変わっていく、カラフル仕様も可能です。見返しの外側に寒
冷紗を付けることも可能です。糸かがりだけの物よりは本が強くなります。コ
デックス装の短所と云えばまさにそこの所で、表紙でくるんでいないので強度
に問題がございます。特に背の部分。寒冷紗で補強すると強度が増すだけでは
なく、スピンを付けることも可能です。コデックス装のコストは上製本と並製
本の間ぐらいです。表紙に箔押しをしたり、合紙をしたりすると金額は上がり
ます。上製本にはない武骨な美しさ、180度ノドまで見える開き、ノドにしっか
りと絡みつく血管の様なかがり糸。コデックス装の人気は現在では不動のもの
がございます。ただ、本文用紙にアート紙、コート紙を使って見開きでノドま
でしっかり濃い色が入る場合、ブロッキングなどの注意が必要です。少部数の
オンデマンド印刷の場合に少々難があります。A4とB5の本の場合。8P、16Pでは、
オンデマンドで刷ることが出来ません。オンデマンド機の場合基本的には菊判
4切サイズ(A3)が最大サイズです。B6、A5ですと8ページ折りが出来るので
糸かがりは出来ます。仕上がりB5,A4はどうするかと云いますと、8ページの
入紙と云う考え方で刷っていきます。1-8(2-7)、3-6(4-5)
この二つの折を手で入紙します。これで8P折りの状態が出来ます。これら8P
折りを帳合して順番にしてかがります。こちらでB5,A4、少部数、オンデマンド、
コデックス装が完成します。
【二度ぐるみ】
無線綴じで表紙を2回くるむ事を二度ぐるみと云います。一回目は、捨てる上質
紙で、二回目は本来の表紙で。表紙と合体させたときに本文を仕上げることが出
来ない場合。又は広開本やオープンバック、フォローバック等の良く開く本をPUR
製本で作る場合。背に薄く塗るだけで強い接着力を持つPUR製本は、良く開く本を
作るためには、必須の材質です。空気に触れながら硬化していくので仕上がりを
確認するのがだいぶ後になる分、オペレーターの熟練の経験が求められる作業で
すが自在にコントロールできればとても読みやすい本を作ることが出来ます。
無線綴じバインダー機には、本体の背糊と脇糊と見返し糊がそれぞれあります。
これらを別々につける事も可能です。普通のPUR製本よりより開く広開本を作るた
めには、2度ぐるみと云うテクニックが使い脇糊で留めたりして仕上げます。上
製本の中身を一回PURで固めてハードカバーと合体させることも在ります。通常ハ
-ドカバーの場合は本文を大きな版で刷って16ページ折りにしたり8ページ折り
にして糸でかがります。そうする事によってよく開く写真集などが出来ます。か
がる事で強さと開きが実現します。これがオンデマンドの場合4ページ、又はペ
ラで刷りますので糸でかがる事が出来ません。この場合、順番毎に印刷した本文
をPUR製本で仮固めします。これをハードカバーと着けることで良く開く上製本が
出来ます。オンデマンド印刷は、トナーや濃度やアジロ折に出来ない性質からPUR
製本は必須条件だと思います。
【小口が階段状になっている本】
小口が階段状になっていると云っても所謂小口でして天と地の小口が階段状に
なっているわけではありません。出来なくは無いですが三方小口の階段状は、
難しいです。並製本でノドの反対側の小口を階段状にする事は簡単です。
ページ数の多い、分厚い本でしたら見ごたえは在ります。章毎の段差を付けれ
ばとても見やすいです。オンデマンド印刷ではページ順に印刷しますので、一
旦順番になったものを区切るところで分けて、小口仕上をして元に戻します。
その時点で階段状になっています。それを表紙で包んで天地仕上げれば階段状
製本の出来上がりです。小口を仕上げることが出来ないので表紙と本文の仕上
がり具合を確認しながら全体のイメージを作っておくことが必要です。小口に
細工をすると色々な仕掛けが出来ます。たとえば偶数枚と奇数枚の長さを1mm
位差を付けます。本文のページが一枚毎に長くなったり短くなったりするのです
がこの本の小口に親指を当ててパラパラとページを捲ると2ページづつ捲られて
いきます。この本を持ちかえて反対から同じことをするとやはり2ページづつ捲
られていきます。この時現われるページが異なるのです。前から捲ったときに現
われる内容と後ろから捲ったときに現われる内容が異なる。一冊の本で二つの顔
を持つことが出来る。これをやる時はページの順番ごとに印刷する方法でやって
しまうと後で後悔する事になります。こういう製本をするときは、ページ毎に印
刷します。本に仕掛けを施す場合は、その仕掛けをしっかり反映する紙を選ぶ必
要が有ります。表紙などもその仕掛けに誘導する紙の柔らかさなどが必要ですね。
これは中綴じでは難しいです。無線綴じで来たらPUR製本の良く開く製本方法が適
しています。
【無線綴じ製本】
製本をするときに本を綴じます。ごく普通には糸で綴じておりました。又は針金を
使用する場合があります。糸で綴じる事を糸かがり綴じと云います。8ページ、16
ぺージを中心が袋になるように折って中心に糸を通しながら折り丁をかがって行きま
す。接着剤で表紙と貼り合せます。糸でかがっているのでページが脱落することは在
りません。接着剤を厚く着けないので本も良く開きます。しかし、手間と時間が掛か
ります。昭和の半ば製本用接着剤、EVA糊が開発されました。こちらは、糸を使わな
いので無線と云うようになりました。ハードカバーでは無い並製本の糸かがりは今
でもありますが、この無線綴じの事を並製本と云います。上に対して並ですね。EVA
糊は温度に弱いのと粘度が悪いので背に接着させる方法としてガリを入れるミーリ
ング。折りを入れながらアジロミシン刃を入れるアジロ綴じがあります。ミーリン
グだけよりアジロ綴じの方が強いです。少しづつずらした点線の間に接着剤を入れ
るので折り丁ごとしっかり綴じるのでページの脱落が少ない製本方法です。しかし、
接着剤の強さを不安視するためどうしても厚めにつけてしまいます。すると開かな
い本が出来上がります。のど元までインキの乗らない文字モノの冊子の場合はさほ
ど不安はありませんが、写真集などページ一杯にのど元までインキで覆われる本の
場合はインキが接着剤を弾く為、極端に接着剤を厚くする必要があります。
PURとは、反応性ポリウレタン系ホットメルト接着剤の事です。建築や車の内装等
では広く使われてきた接着剤ですが、製本を用途として使われ出したのは、ごく最
近の事です。ヨーロッパでの普及が進んでいて日本での普及は5年前位からです。
PURとEVAの違いは糊の強さと柔らかさです。倍の強度があります。EVA糊が1ミリ
以上の厚さで塗布するのに対してPUR糊は約3分の1です。0.3・4ミリと云う厚
さで接着して十分な強さがありながら、薄くて柔らかいのでとてもよく開く本が出
来ます。オンデマンド印刷のトナーもEVA糊との相性が悪い物です。また、オンデ
マンド印刷は、ペラで順番を揃えながら印刷していきますので、アジロ折が出来
ません。オンデマンド印刷こそPUR製本にとても向いている製本方法です。