富士山 続き

2013 年 7 月 2 日 火曜日

窓から明るくなりかけた街並みを眺める。

5時になると下町の商店街の方向にある建物の煙突から

大きな煙がもくもくと湧き出します。多分豆腐屋さんが準備を

始めたのだろうと思います。パン屋さんと豆腐屋さんは、朝が

早い。我が家のバルコニーの方でもチュンチュンたくさんの雀の

鳴き声が聞こえます。どこに来ているのか、私には解ります。

あの山椒の木で踊り続けている命です。追い払いに行こうかと

思いますが、せん無いことです。雀たちは知っている。

もうずっと繰り返されていること。朝食の折に山椒の木の鉢の周りを

見やると黒い筋が幾重にも重なり、雀たちの暴虐の名残を記しています。

嘴で樹から引っぺがした幼虫をコンクリートに叩き付けて止めを刺して

啄みます。毎度のこととはいえ、二人で暗い朝食を頂きます。

富士山の麓、富士市の前に広がる駿河湾。ここにもう一つの日本一が

あります。ここは水深2500メートル。たった50キロ隔てたところに日本で

一番高いところと一番深いところがある。この地形の特異性、陰と陽、

日本文化の原点を象徴しているのかも知れません。食物連鎖やそんな

ことをつらつら考えていたら、富士山狂騒曲もこれも一つの在り様のように

思い始めます。軽い装備で行くと死ぬ思いをする。でもそこを潜り抜けると

新たな発見があり、自信につながる。自己責任という言葉が流行ったり、

廃れたりしていますが、富士山は間違いなく自己責任が問われる世界です。

誰もが自分の足で降りてくるほか無い所なのです。富士登山マラソン。

千回登頂。最長寿登頂など囃し立てる声は姦しい。それに乗せられて

行くも良し。準備万端滞りなく挑むも良し。とにかく登ることが祝祭です。

踊り続けるほかない私たちなのです。

8合目の続きはとても凄い展開が続くのですが、傷つく人も出るし、

ここに書いてもしょうがない。

聖も濁も汚もすべて呑込み昇華してくれるのが富士山。

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