久里浜の蛸

2021 年 3 月 31 日 水曜日

走水から佐島まで三浦半島に黒潮がぶつかる処は蛸が生息する磯根に

恵まれ、餌となるサザエ、鮑、伊勢海老が豊富な処でそれらの高級食

材をたらふく食みながらその身に旨さを凝縮していくのです。所謂関

東の蛸と云えば久里浜の蛸でした。グルメの頂点に君臨する存在です。

関西の蛸と云えば明石の蛸なのですが、それは渦潮の海流にもまれた

弾力の強い身質と云った若さだけが勝った味に他ならず、蛸の王者と

しては、久里浜に軍配が上がるのです。しかし最近は久里浜の蛸を目

にする機会が少なかった。佐島の蛸や三崎の蛸は時々見ます。去年の

暮れの築地の買い出しで山盛りの久里浜の蛸が在ったのです。他を圧

倒する色の黒さには大いなる秘密が在ります。蛸は通常塩でぬめりを

取る、洗濯機で塩洗いする、こん棒で蛸殴りをする等、其の地其の地

で工夫を凝らしながら塩ゆでするのですが、久里浜の蛸は違います。

塩でぬめりを取る処までは同じなのですが、その後、カカオの粉を塗

して蒸すのです。それで独特の香りと味になります。先日の三浦半島

の遠征で幼少の頃からの蛸好きが久里浜を素通り出来よう筈も無く、

方々を調査させて頂きました。先ず、現在は蛸漁師はワカメを獲って

いると云う事。最近一人が廃業したと云う事。二人しか居ないけど高

齢であると云う事。兎に角、蛸の聖地久里浜くんだりまで足を延ばし

てタコの足一本無いのでした。寿司屋でも蛸は在りませんでした。

築地で久里浜の蛸が山盛と云うのはあり得ない状況です。全て飲食店

の自粛が理由です。中野の味のマチダヤと云う酒屋でも磯自慢、黒龍、

豊杯等がごろごろ転がっています。高級飲食店の自粛が高級食材の品

余りとなって宅呑み派の恩恵となっているのですが、廃業と云う処ま

で行かれてしまうと寂しいモノです。

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