映画 Touch Me Not 

2020 年 7 月 6 日

「あの頃」映画編。百合子さんはテレビと映画は良く観ている。

サスペンス、ホラー、殺し合い、やくざ者等派手なアクション

ものがお好きなようですが、ポルノ映画3本立ても良く観ている。

自宅で文士仲間のご夫婦を招待して「ブルーフィルム」等も見て

いる。これは観ていると云うより、正直に書いているという方が

正しい見方でここが武田百合子さんの文章の魅力なんですね。あ

けすけです。「だってしょうがないもん、あたしたちはこんなで

す。」と云ったところ。文学を突き詰めるとはこう云う事でも有

るんですね。とっ、武田さんを出しにして私の映画の話。

土曜日に「タッチミーノット」を渋谷で観ました。深い処に降り

て行けそうだったので。障害者の性、トラウマで心が解放できな

い性、そして独自のフェチズムに囚われた性。ジェンダーとして

の性は多種多様、千差万別。そこに様々な性の動機が加わってセ

ックスは無限に花開く。小学生の時に読んでいた江戸川乱歩は、

充分に性の多面性を随所に現していましたが、ルパンやシャーロ

ックホームズも事件と捕獲などに性の隠喩が隠されていた。ミス

テリーモノのすきが高じてミステリマガジンを読むようになりま

したが在る時「SMマガジン」を間違えて買って、SMの世界を

知ってしまった。知ったからと云って実践していた訳では無いの

で念の為。20代で知った、コリンウィルソン、澁澤龍彦はセク

シャリティがアートに昇華する場面を数多く見せてくれた。10

年前知った坂詰信吾さんは、生命の発現者に対する根源的な性の

介護と云う究極の議題を提示してくれました。心に壁を作るのは

異物が入って来るのを防ぐ事ではありません。自信の心の中に在

る欲求が奔放に飛び出さない様にす為と云うのは、ある青年の言

葉。怖いのは自分自身なのです。「私に触らないでね。」と云い

ながらすり寄って行くのはローラです。ホスピスの父親に何かを

投げつけて、父親が自ら点滴を抜く?(多分)ここからローラは

シャウトし始める。


荻窪の店

2020 年 7 月 3 日

東京に出て来て最初に住み始めたのが荻窪でした。6年住んでいました。

ここで東京の味を学びました。ラーメンは春木屋、丸信、丸福。蕎麦は

本むら庵、鰻は東家、鮨は金寿司、末廣寿司、もつ焼きは大黒屋、かっ

ぱ、中華はふんよう亭、ジャズのいわしの目。古本屋も良い店が一杯あ

った。古くから荻窪は、文士村だったし愛人村でもあった。近衛文麿の

家も在った。40年前の話だけどまだ残っている処は多い。大黒屋とい

わしの目と末廣寿司はもう無い。しかし未だに荻窪に通っているのです。

本屋のtitle、荻窪キムチ等は最近行き始めた処ですが、年に一回食べる

鰻は東家ですし、最近復活させた寿司屋は金寿司です。アルバイトで貯

めた5千円を握りしめて半年に一回通っていました。洗い立てのジーパ

ン履いて白いシャツの皺を伸ばして、風呂に入って身ぎれいにして一端の

大人のふりしてカウンターに座って酒を飲みながら、知ったかぶりの魚の

話をしておりました。まだ若くて優しいご夫婦が全て承知の上でお相手

して呉れた。今から考えたら顔から火が噴きだすような思いです。今年

の2月に昼間っから散々、つまみと酒を飲み散らかして二人で9000

円しか取らないので幾らなんでもと少しよいしょしています。もうお二

人とも70歳を越えていると思うけど大みそかも正月三が日も営業して

いると云います。「正月の出前はもうしないのよ」と云うけど。カウン

ター9席だけの小さなお店ですが、頗る気持ちの良い時間が過ごせます。

若い頃世話になって、年とっても世話になっていたんじゃ申し訳ない。

荻窪5丁目 荻窪南口仲通り商店街を5分ぐらい歩いたところ。

2020 年 7 月 3 日

小さい頃風邪を引くと裸にされて背中におばあちゃんの口からお

神酒を吹きかけられ加持祈祷で風邪を治す家でした。爺さんは、

一斗の酒樽を用意して同僚3人で飲み比べをして半分近くを呑

んでしまう人です。12才になったら元服じゃと云って酒を飲

ましてくれる家でした。家畜の様に殴られ続けていた暴力もぴ

たりと止まりました。そんな事が嬉しくて酒が切っても切れな

い習い性になりました。あらゆる処に酒が顔出す家なのです。

先日の日曜日の夕方の本の世界に引きずり込まれた処で、「あ、

やばい酒だ」と思って冷蔵庫の酒瓶に手がかかった処でポロポロ

涙を落としてしまった事が、その様な性分を改めて考えるとこれ

は殆んど依存症だなと思い至りました。なんだかんだで酒で誤魔

化して来ている。我が家はほとんど同じものを食べ続ける家です。

1年に1000回食事をするとしてあと20年で、2万回の食事

をしてあの世に旅立つ。毎回違う物食べようか?と云う話をした

ばかり何ですが、酒の話の方が大切なことかも知れないなと思い

始めています。

選挙

2020 年 7 月 2 日

経理のY君は自転車通勤です。朝北区を通りかかったら北区区議会議

員の補欠選挙立候補者の掲示板が在ったそうです。Y君はまだ独身な

ので見目麗しのご婦人に目が在りません。特に無視できなかったのが

一番下の半裸の女性です。アベノマスクでブラジャーを造って媚びて

います。ホリエモン新党。

3年前の秋、衆議院を臨時解散して総選挙に打って出ました。森友・

加計問題で国会で責め立てられ、あたふたと弁明に弁明を重ね、窮状

ここに極まって「国難突破解散」と開き直りました。次の朝の朝日新

聞一面は「こんな選挙に意味は無い」でした。投票率は53%で前回

とあまり変わっていません。約半数の人が棄権しました。選挙に意味

が無いと大新聞が宣うのですから浮動票は行きませんワナ。投票行動

を損得であれ、信条であれ毎回確実に行う人は約35%から40%位

です。あとの人は良く判らないか、興味が無いか、どうせ変わらない

と思っている人です。浮動票を動かさないのが大本営の大事な仕事。

野党のごたごたは格好のニュースです。今回の都知事選でも破廉恥な

有象無象が大挙して繰り出し、愚かな選挙を印象づけています。コロ

ナのタヌキが選挙活動をしないのは作戦です。そう云うモノと一緒に

されない様に隠れている。候補者を好き嫌いで選ぶのは愚かです。我

々都民の損か得かの行使で十分なのです。自分にとって得になる人を

選びに行く。タヌキになったら又、コロナ、コロナ云うて・・・・。

武田百合子「あの頃」「富士日記」

2020 年 7 月 1 日

富士日記は面白いと云う人が多い。しかし読んでも面白く無いのです。

カレーライス食べた。ビール1ケース持って来て貰った。とんかつ食

べて寝た。ガソリンスタンドのオジさんが菓子をくれた。と云う様な

記述がずっと続きます。ここで何が面白いのだろうと投げ出すのです。

もう十年以上本箱に差し込んであって、誰かがエッセー等で言及する

たんびに取り出してきて読むけど、理解できないまま「ふん!」と元

に戻すと云う様な事を繰り返してきた。「あの頃」は、武田百合子の

その文章力が縦横に堪能できるエッセー集。そこに「富士日記」の生

い立ちが書かれて在った。泰淳が執筆の為に作った富士山荘で百合子

にここに来たら、日記を付けたらどうだろうと薦めたもの。本人は乗

り気では無かったけど兎に角書き始めた。富士日記(上)の最初の方

は手習いですね。未だヨチヨチ歩きだ。それが「あの頃」になると凄い。

何故か本の最後の方に在った「櫻の記」から読み始めた。日曜日の夕方

だったけど、読み終えて酒飲もうと思ってカミさんの後ろ通って冷蔵庫

明けて酒瓶取り出したところでぼろぼろと泣いてしまった。凄い書き手

です。こんなに凄い人を「ふん!」と云って本棚に閉じ込めていた。

武田泰淳は、百合子の文才を見抜いていて書く事を薦めています。元々

の素質に泰淳の口述筆記が乗り移って本来の天衣無縫の軽身のままに文

才が花開いている。久々に夢中になれる読み物です。


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