デザインのひきだし 紙の加工大全

2015 年 6 月 16 日

発売中のデザインのひきだし25は、今回紙の加工です。

まず表紙にレーザーカット切り抜き、全長8.5メートル。10,000冊分

造るのに約2週間。ひきだしさんだから出来ることであって、表紙の作成に

いくらかかるか判らない金額だと思います。断裁加工、抜き加工、削る加工

折り加工、貼り加工。その他、エンボス、凸和紙、ボーダード加工、ロウ引き、

紙象嵌、点字、製袋。知らない加工もいっぱいありました。

印刷の技術から、昨今は形の妙にトレンドは移ってきています。

変わったのではなく、インパクトのある印刷プラスインパクトのある造形で

しょうか?現在私の名刺の厚みは約1mmあります。「加賀Aクラフトボール」に

活版印刷で墨で印刷してあります。お渡しすると皆さん一様に驚かれます。

今の物がなくなったら、今度は新しく厚さ2mmに合紙して活版で名刺を

印刷して直径10センチぐらいの円形に抜き、名刺兼コースターとして

使ってもらおうかなアイデアを膨らませています。

新しい紙 エアラス

2015 年 6 月 13 日

特種東海製紙。

タント、レザック、Mr.B、ミセスB-F、マーメイド、モデラトーン、等々。

特殊紙、ファンシー系ペーパーを数多く出しておられるメーカーさんです。

5月に社運をかけて完成。名だたる用紙卸屋さんを集め、発表に及んだ

用紙「エアラス」 Mr.Bの質感でよりクリアな印刷表現が出来るように表面

特殊加工してあります。去年出た王子製紙の「OKミューズガリバー」がなかなか

良くてグロス感とテクスチャーのバランスが良いのが気に入っていました。

石川竜一さんの写真集が両方ともOKミューズガリバーです。沖縄の質感が

良く出ています。エアラスはその名の通り紙の中にとても多くの空気を含んで

います。嵩高でありながら、とても柔らかい。嵩高の手触りを残しながら稠密な

網点再現性を実現しております。従来抄いた用紙に塗工材を塗布しながら、

次の工程でその余分な塗工材を削り取っていました。その削り取るという

工程が表面を毛羽立たせるという結果を生み出し、粗い印刷仕上がりに

なっていました。エアラスは吹き付けただけでそのまま乾燥させます。

嵩高で緻密、白くて柔らかくて温かい優しい手触り。今求められる用紙の

ほとんどを兼ね備えているかもしれません。

4/6判Y目

80K(0.12mm) 100K(0.16mm) 120K(0.19mm)

菊判T.Y目

55.5K(0.12) 69.5K(0.16) 83.5K(0.19)

持って触った感じは上記ほどの厚みがあるようには感じません。

写真集、パンフレットにお奨めです。

金額はヴァンヌーボの0.8倍ぐらいです。

ブラッスリーハルナ

2015 年 6 月 10 日

フランス料理というものは結婚式場でしか食べたことありませんでした。

それが親戚にフランス料理店が出来たものですから、今年になって

何度となく、フランス料理を堪能しております。

トマト味のジュレにますの卵とウニと香草野菜。

中のこげ茶の物は豚の血を焼いたものです。

とても美味いと思ってしまいました。

豚の血です。間違いなく一線を越えてしまった。

とどめはザリガニです。これも生まれて初めて食べました。

小学校時代のおっかなびっくりのザリガニに初めて勝った気がした。

車谷長吉さん 逝く

2015 年 5 月 21 日

8年前にイニュニックで初めて車谷さんの本を作らせてもらいました。

非売品の私家版です。装丁、装画、車谷さんです。100冊だけ作成しました。

名前は存じ上げてはいたけど本を読んだことはありませんでした。

その時、ざっと目を通しただけでしたが、強烈な内容でした。

こんなことまで書く人なんだというのがその時の印象です。

その時気にはなったのですが、時間の余裕がなく、次に車谷さんと

向き合うのは新書館から出た3冊の全集でした。

酒も飲まないでひと月ほど延々と読んでいましたね。露悪家、偏執狂。

劣等感、独善性、嫉妬心、虚栄心、ハッタリヤ、へタレ。弱さと悪と

悲しみがこれでもかと云わんばかりに詰め込まれていました。

でもそれを読んでいると気持ちが晴れるのです。

「現代の眼」の編集部にいた。池袋西武で本の編纂をされていた。

姫路のご出身。色んな意味で思い入れを深くした人でした。

そして、最後にノドに何かを詰まらせて死んじゃった。長吉さんらしい。

私の母も特養でノドにパンを詰まらせて死にました。

この本は印刷屋の見本として持っているものです。

カバーは緑の和紙で赤金箔と黒箔。紙の耳は

くれぐれも切らない様にと云うお達しでした。

東京新聞の夕刊に井口さんの追悼文が載っておりました。

「二人の女」はどうも最後の私小説として出版しようとして

いた本のようです。私も全集を読んだ後でちゃんと読み直して

感じたことは、あまりにも書きすぎている、これは世には

出せないだろうと。「私小説作家廃業」となったとても貴重な

本のようです。だから、うちに廻ってきたのでした。そう云われれば

これは爆弾のような本です。とんでもない話が暴露されています。

東京新聞「アートな本」

2015 年 5 月 18 日

東京新聞日曜版の書評欄、「アートな本」で林さんの

「東海道中床屋ぞめき」が紹介されていました。

床屋さんは美容室に駆逐され、我々印刷屋と同じ衰退産業に

なろうとしていますが、ところがどっこい床屋には床屋の独特の

味わいと仕事があります。美容室は見た目をただ綺麗に美容する

だけですが、床屋は床に上がるための準備をしてくれるところです。

そういった意味で相撲取りの髪を結うのを床山と云います。

さて一般的には床とは「床上手」などと閨のことを言いますが、

広義には1段高いところでハレっぽい所の事を云います。

普段、美容室に行く私が、前回床屋に入ったのは、父の葬儀の

朝でした。ずいぶん昔に離れた故郷とはいえ、やはりどこかに

このような時は、床屋だろうと体に染みついた癖が働いたのかも

しれません。林さんとのお話でも全体的にキャバレーの様な

ディスコのミラーボールの様なキラキラした感じで行きましょうと

纏まりました。床屋の生業などを考えながら一枚一枚見ていくと

そこの主の性癖などが見えてくるようです。

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