呼びさます写真

2018 年 4 月 18 日

編集部にある松葉さんの写真をもうかれこれ2か月以上、見続けています。

昨夜、BSで渥美清の「拝啓天皇陛下様」をやっていました。

何回か見ている映画でしたが、なんとなく観つづけてしまいます。

この写真の少年位の年の頃。家から1キロぐらい離れたところに

大きな川が在って橋の下に傷痍軍人が住んでいました。昭和35年頃。

片足がありませんでした。私は、しょっちゅうその人を見に行っていました。

暗くなるまでその人を見続けて、黙って帰ってた。

昨日渥美清を見ていたらあの傷痍軍人と6歳で亡くなった姉を

思い出してしまいました。松葉さんの写真は私だけに響くものでは

ないと思います。みんなが持っているあの確かな幸福の時間、瞬間。

そこに静かに案内してくれる。

写真家 松葉末吉

2018 年 4 月 18 日

松葉さんは1902年生まれの人。木村伊兵衛さんとはひとつ違い。

一回り下に植田正冶さんが居ます。昭和元年が25歳ぐらいですから

それぐらいから戦争までの間、バスの運転手と云う仕事の合間に写真術を

勉強されて家族や身の回りの物を独学で撮り続けておいでだったようです。

終戦を機に写真はやめられてそれ以降、カメラを手にされなかったようです。

何かを失くされてしまったようですが、それにしても・・・・・・・。

松葉さんの写真を見ていると胸を締め付けられるような思いに駆られます。

来週発売の「未明02」の隠し玉。一挙、32ページ掲載。

4月25日荻窪「Title」先行発売です。

2018 年 4 月 16 日

もうかれこれ1年半、殆んど毎週、狛江の推拿整体の先生の所に

通っています。日曜日の午前中に行っているので、殆んど旅行にも

山登りにも行けないし、土曜日に仕事したら週末は狛江詣で終わって

しまいます。最初はぎっくり腰を治しに通っていました。そのうち昔の

古傷が甦って来ました。それも治りつつありますが、いまは、身体に

ついての不思議とそれらの関係を勉強しに行っている感じです。痛い

ツボを責められながら身体の構造を訊くのがとても為になります。こんな

年になって一番根本の身体の事を勉強するなんて、今更ながら遅きに

失した感が否めません。身体の中にこころはあります。良い事も悪い事も

一番先に知るのは心臓です。こころが人の生き方の全てを決めます。

そのこころが身体にあるのです。3か月で入れ替わる60兆個の細胞の

一つ一つがこころを作っているのだと思います。大脳の細胞は200億

個ですので0.03%しかないです。そのたった0.03%の部分に一日の、

又は自分の人生の大半を委ねている。それは何処かいびつな事。

身体が整っていくと、こころが穏やかになって行きます。特別な何かを

食べたいとか、特別などこかに遊びに行きたいとか、あまり思わなくなって

来ました。食事の好みも随分変わって来ます。野菜を多く摂るようになった

かな?初めてのお客様でもあまり緊張しなくなりました。

生まれた時に完全無欠だったこころは、対人関係や社会の軋轢に

さらされることによってだんだん歪んでいきます。その歪は身体に現われます。

身体を整えることは心を整える事と云うのは、まさしくそういう事なんだなと

今更ながら知らされました。先週上野に国立博物館の人体展に行って

来ました。ずっと見ながら、これは文字通り人体で在って身体では無かった。

西洋医学は心と身体を別のものと考えるので、私が探しているものでは

ありませんでした。「いのちを呼びさますもの」医療と健康、体と心についての

深い哲学が書かれた本です。世界とも誰とも繋がらない私と云う宇宙に今

興味がつかないです。

 

映画 ラブレス

2018 年 4 月 9 日

色んな隠喩がちりばめられた映画。とてもストレートにそれぞれが

描かれていています。倒木、冷たい水、冬なのに取り残された鳥。

神経質に鳴らされる甲高いピアノ。ずっと静かに響き続ける電子レンジの音。

非常線に貼られるテープが風に吹かれる。罵り合う夫婦、セルフィーの

大人たち。雪遊びの子どもたち。何故か泉谷しげるの「春夏秋冬」が

頭の中で響き始めました。うるさい床の音はそれぞれの苛立ち。ラジオから

流れる政治の話、ロシア国家の問題、愛の無い人達を描きながら対照的な

ボランティアの人たちの献身。しかしその背後にあるイギリス系キリスト教会の

存在を、デフェンダーでなんとなく暗示しています。元共産主義国が作り出

してしまった人民のエゴイズム、厳冬に立ち向かわざる得ない強い克己心。

そこに出現したスマホ。ロシアのジャージを着てランニングマシーンで走る

主人公の目は、我々を覗き込みます。消費主義社会で王様になり、スマホを

手にして神になった我々を。

最初に木に引っ掛かった非常線のテープで映画は終わります。

甲高いピアノの連打。とても良い映画でした。私たちの暗喩。

たった一行の明滅

2018 年 4 月 6 日

本の帯、最終稿。「君たちはどう生きるか」と云う本はそのタイトルだけで

200万部売れました。あんなタイトルを付けて欲しいと駄々を捏ねると

編集部が知恵を絞って、キャッチコピーを付けて来てくれました。

「たった一行の明滅」言葉は神なり。あなたに見つけられる事に

よってあなただけの言霊、祝詞、真言になります。


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