東北食べる通信 桜鱒

2018 年 5 月 24 日

山女魚と桜鱒は同一魚だそうです。これには驚きました。しかしまあ、

人間でも住む場所によって呼び名が変わるというのは、いくらでもある

訳で何かの線引きと云う固定観念は世界を狭くするだけです。喧嘩ッパ

ヤイ渓流の山女魚が海に出ると穏やかなフレンドりーな性格になると云う

からこれも驚きです。狭いところに閉じ込められているからイライラして

しまう。人間も魚も変わりゃしませんね。

青森県むつ市大畑。その先にはマグロで有名な大間が有ります。「海峡ロ

デオ大畑」がチーム名。漁業を通して大畑を盛り上げようという漁師さん

達が集まりました。定置網漁で魚を取っているのですが、サケ、マスでブ

ランド化を図ろうというのが作戦です。これから事に中るのにチームで動

くと云うのは重要です。6次産業と云うのは色んな役割を担う人が集まら

ないと上手く行きません。家族だけでやろうとしても無理がある。ライバ

ルは世界中にいてチームと食材と加工技術がドンピシャに嵌らないとヒッ

トしない。しかし嵌るとずっと続くブランドになります。海峡ロデオ大畑

やって繰れそうですね。

カブトガニの献血

2018 年 5 月 24 日

三億年前から生きる化石、三葉虫の子孫。小学校の教科書にシーラカンスと

ともに載っていました。中華鍋を伏せてお玉を尻尾に見立てれば家でもカブ

トガニごっこは出来ます。アメリカのデラウェア州では、カブトガニに献血

をさせているようです。カブトガニには、テトロドトキシンと云う青酸カリ

の850倍の猛毒があります。それ故に三億年もの長き亘り種を長らえて来

たのですが、まさかその血で猛毒を造ろうというのでしょうか?いえいえそ

うではありません。カブトガニの血液には特殊な血球成分が含まれているそ

うで、体内に入った細菌の毒素をゼリーのように固める性質があると云いま

す。無駄に種を永らえて来た訳では無かった。やはりあらゆる種に存在理由

が在るのですね。デラウェアの海岸に白いテントが建ち、沢山並べられたシ

ートの上でカブトガニ達が腰に針を刺されて静かに手を閉じたり開いたりす

る。それぞれの脳裏に三億年と云う時間の感慨を噛み締めている筈です。

毎年、数十万匹が血を抜かれ、中には抜かれすぎてオレンジジュースを

握りしめたまま事切れる者もいるそうですが満足でしょう。生きた化石の

終焉が始まったようですね。すべての生き物は、人間に奉仕すべき宿命なの

ですね。

# Me Too

2018 年 5 月 24 日

崇拝と侮蔑の裏表

実用の本、趣味の本

2018 年 5 月 23 日

先週の編集会議でたまたま、夏葉社の「昔日の客」と云う本の装幀につい

ての論評があり、そう云えば昔買ったなと頭の片隅に引っかかったのが在

って、棚からひっぱり出して読み始めたのでした。これは装丁や佇まいや

タイトルに惹かれて買ったは良いが数ページ読んだだけで投げ出したもの

でした。大森で古本業を営む方の回想録でもうそれはキラ星の如くの大作

家先生方との交友録でもあり、文学好きにはたまらないエピソードの数々

なのです。いま読み返していますが本当に面白い。でもこころはときめい

て入ないのです。もう随分前から小説が読めなくなっています。昔日の客

は回想録なのでフィクションでは無いのですが、普遍に繋がらない個別の

経験譚から丁寧に本質の部分を探り取るという地道な作業が出来なくな

っている自分がいます。時間の流れに影響されすぎている。頭を切り替え

なきゃ駄目だとも考えているのですが、時間が無いと思い込んでもいる。

将来に対する不安がそうさせるのでしょう。勢い歴史書や人類史、文明論

欲望の形など実用的な本ばかり読むようになっています。「原民喜」や

誌とアートと写真などを取り扱う叢書を発行している者としては、実利

的過ぎるのはやや問題だと考えますが、経営者としては致し方ないかと

考えたりもします。この本は、装幀がシンプルで素晴らしいですね。

イニュニック未明編集室は、特別な美装本を丁寧に作って新しい文芸書

と云う地平を切り開きたいと考えています。

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