花と龍 中村哲さん

2019 年 12 月 5 日 木曜日

「花と龍」は、息子の火野葦平が両親の事を書いた実録小説です。

舞台は北九州、若松区。明治の終わりに若松の石炭集積地に流れ着いた

両親が度胸と義侠心で波止場の暴力を束ねて行く話です。ご自身の名前も

実名で登場します。玉井金五郎とマン。中村さんのお母さんは火野さん

の妹、秀子さん。若松は特にも画にもとてつもなく暴力性を帯びた町で

す。一見何気ないのですが、怒りの沸点が異常に低い。ちょっとしたこ

とで虎やライオンのような顔になって喧嘩が始まる。日本で一番短気な

街。時々墓参りに帰りますが静かに道の端を歩いています。玉井家の話

は、叔母さんが遊びに行っていた関係で色々なエピソードを訊いて育っ

たので玉井家については、思い入れも強くて応援もしていました。

その玉井金五郎に一番、性格が似ていたのが中村哲さんだと云います。

しかし、その印象は、静かで寡黙です。心の中に滾るほどの熱さを持っ

ていながら爺さんと同じ度胸と義侠心の人でした。

読まれなかった小説

2019 年 12 月 3 日 火曜日

ドローンの映像が山を駆け下りる一台の車を俯瞰で撮る映像から映画が

始まります。一人の若者がチャイを一口、グビリと飲み込みます。

後から考えたら茶飲み話なんだなと膝を叩くのでした。

小さなグラスで茶色い液体をぐびりと飲むと一般的には昼間であっても

それはスピリット、酒です。しかしここトルコでは、多分イスラム教徒

として酒を飲みません。お茶を飲みながら色々な議論を交わすのだと思

います。飲んベイの私が言い訳する訳ではありませんが、人生に酒が無

ければキツイ。とんでもなくきつい。酒はまたは酔いは、問題を先遅り

出来ます。無かった事にする事が出来ます。酒は諦めさせてくれる。

先送りできない人生は、ずっと目の前に問題をぶら下げた状態で日々

の暮らしと向き合わなくてはいけないのです。酒の無い人生の代わりに

あるのが賭け事なのです。先送りにしないでひっくり返す事が出来る

勝っても負けても。所々で破滅的な瞬間が挿入されます。イスラム教徒

のきつさとは又は、一神教の辛さとはここでは無いかと思います。

一つの家族、親子を通して明かされるのはトルコと言う国のありような

んだと思います。映像が綺麗です。しかしその懐では、ずっと変わらな

い人生の懊悩が横たわっている。その懊悩を酒無しで議論し続ける、

キツイ、あまりにもキツイ。話は変わりますが島根の板倉酒造「天穏」

がとてつもなく良いです。バランスがとても良い。至って普通ですが

この普通さ加減で途轍もなく美味いと思わせる酒と云うのは、尋常じゃ

ないのです。

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