読まれなかった小説
2019 年 12 月 3 日 火曜日ドローンの映像が山を駆け下りる一台の車を俯瞰で撮る映像から映画が
始まります。一人の若者がチャイを一口、グビリと飲み込みます。
後から考えたら茶飲み話なんだなと膝を叩くのでした。
小さなグラスで茶色い液体をぐびりと飲むと一般的には昼間であっても
それはスピリット、酒です。しかしここトルコでは、多分イスラム教徒
として酒を飲みません。お茶を飲みながら色々な議論を交わすのだと思
います。飲んベイの私が言い訳する訳ではありませんが、人生に酒が無
ければキツイ。とんでもなくきつい。酒はまたは酔いは、問題を先遅り
出来ます。無かった事にする事が出来ます。酒は諦めさせてくれる。
先送りできない人生は、ずっと目の前に問題をぶら下げた状態で日々
の暮らしと向き合わなくてはいけないのです。酒の無い人生の代わりに
あるのが賭け事なのです。先送りにしないでひっくり返す事が出来る
勝っても負けても。所々で破滅的な瞬間が挿入されます。イスラム教徒
のきつさとは又は、一神教の辛さとはここでは無いかと思います。
一つの家族、親子を通して明かされるのはトルコと言う国のありような
んだと思います。映像が綺麗です。しかしその懐では、ずっと変わらな
い人生の懊悩が横たわっている。その懊悩を酒無しで議論し続ける、
キツイ、あまりにもキツイ。話は変わりますが島根の板倉酒造「天穏」
がとてつもなく良いです。バランスがとても良い。至って普通ですが
この普通さ加減で途轍もなく美味いと思わせる酒と云うのは、尋常じゃ
ないのです。