私たちが失った物
2018 年 11 月 25 日 日曜日ソニーのCDプレーヤーが壊れていてかれこれ3回目で買ってから20年たって
いてこれを直そうという気にならなくてここ二,三年は家で音楽を聴くこと
がなくて専らウォークマンを聞いたり聞かなくなったりの日々が続いていま
した。それが先週、急に思い立ちレコードプレーヤーを買ったのでした。
ビートルズのホワイトアルバムが限定でアナログレコードが発売されるとい
う広告を見て勢いで買ってしまいました。この週末は、針を取り付けたりア
ンプ周りを整理したり。ビデオデッキとCDプレーヤーと電話ファックスを粗
大ごみに。同時にクイーンの「ボヘミアンラプソディ」のチケットを予約し
て備えていたら天声人語に映画館の中で皆がフレディマーキュリーに合わせ
て合唱していると云うのでそれは覚えて備えなきゃというのでタワーレコー
ドにクィーンのアルバム買いに行ったのです。夕方、池袋のタワーレコード
に行ったらバンドとファンの交流会みたいなのがあって、売り場に500人
ぐらいの人が犇めいていて年齢層高めでとても知的でハイセンスな人が多く
てこのような括りのファンと云うのを見たことが無くていったいどのような
バンドだろうと店員さんに聞いたら何とかと云うパンクバンドですと云うか
らパンクと云ったら暗黒大陸ジャガタラやらスターリンとかしか思い浮かば
なくて当時の屋根裏なんかに来ていた観客を思い出したらもっと汚くてぶっ
飛んだのしかいなかった記憶しか無くて今のパンクはもっとおしゃれなんだ
なと思ったのでした。クィーンは活動当時さほど熱中したバンドではありま
せんでした。アルバムも買った記憶は無いし、好きでも嫌いでもなかった。
熱を上げるには年を取り過ぎていた。フレディマーキュリーがゲイだという
事位の知識しか無かったけどそんなことはどうでも良い事でした。あまりに
も煌びやかなヒット曲が多かったので真正面から好きだとかとても良いとか
いうのが恥ずかしい存在だったのです。今はもう少し正直です。映画はクィ
ーンの成功とフレディマーキュリーの孤独と死の話と思われるでしょうが
僕はもう少し違う悲しみを観ていました。最後イギリス、ウェンブリーを
埋め尽くす大群衆。アフリカ支援チャリティ、あの「ウイアーザワールド」
です。一つの場を共有してアーティストを通してアフリカの貧困をなくそう
と理想を掲げる全世界的な連帯、10万人近い人々が同じ場を共有して繋が
りあう祝祭。それを可能にするアーティスト達の才能。30年前には、合っ
たのです。アイポッドがネットがスマホがそれらのモノを殺してしまった。
勿論それらがお花畑だという事は、後で判ったにせよ、もうあの高揚感は
二度と甦る事が無い。
帰りにスマホで池袋駅前の電飾を撮る私。まあ人生泣いたり笑ったりです。