推拿 畢飛宇

2016 年 10 月 6 日 木曜日

先月、台湾の方の紹介で中国式按摩、推拿整体のお店のチラシを作りました。

チラシを作ったのとこの本を読み始めたのが丁度同じ時期でした。その台湾の

方は目は見えるのですが、小柄の女性の方でした。推拿とは体の経絡、ツボを

手で揉み解し、体のバランスを正常に戻す整体です。

最近の私は目から離れたところの感覚や表現に関心が向いています。

吉増剛三さんからですね。言葉やテキストを音、声、体の動き、時間に置き換えたり、

山谷さんの写真が写す夜の家シリーズなど。これは、灯りの消えた家を撮りながら

家の中の家人の様子を連想させます。夢の中で本能を開放させたり、夜の営みの

中に自分自身を見出し体を解放させたり、見る見せる世界から離れて世界を

目以外のより身体性の強い感覚で再構築する表現が面白いです。

この本、邦題「ブラインド・マッサージ」は、南京のあるマッサージ店を舞台に

そこで働く盲目のマッサージ師のそれぞれの来し方、生き方、覚悟を温かく

書いています。ある意味運命に身を委ねるしかない人生は、プライドとそれを受け

入れる強さが必要です。我々は目で世界を見ているようでいて、表層をなぞって

いるだけで、どれだけ本質を見極める事が出来ているでしょうか?

世界を感じる事と事象の本質を見極める事に命がけの彼らの思考はとてつもなく

深いのです。逆に言えば膨大な絵で世界を理解した気になっている我々は

どんどん幼稚になっているのかもしれません。久々に時間を忘れて読み耽る

事が出来ました。現代ものでは中国文学は初めてでしたが、レベルは相当高い。

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