七夕と水売り

2014 年 7 月 7 日 月曜日

隣のテーブルからミズウリという言葉が聞こえてきたのです。

その時私は本を読んでいて、丁度、ミズーリの調印式の場面を

読んでいたのです。少し前から読書に集中できないまま、隣の学者然と

したお三方のお話を聞くともなしに耳にしていたのです。

学会で東京に出てきた。若いころ同じ大学にいた。海洋学の研究か何かを

している。禿げ頭を携帯で撮ってかみさんに送ろうとしている。

年取って久々の学友に会ってみんな心から寛いでいる。良いなと思っていた

のです。喋るお話が上品だもの。こんな友人が欲しかったなとつくづく思った

のです。

江戸時代、水売りという職業が有ったというお話。深川あたりの井戸の水は

塩分を含んでいて飲料に適さなかった。玉川上水から天秤棒で担いできて

売っていたというお話でした。つげさんの無能の人という漫画の中で石売りが

出てくる。石売りの商売の肝は仕入れが只だということ。いい商売だなと

思っていたのです。水も只のところから汲んでくる分には仕入れはタダです。

只の物で商売ができるのは仕入れ原価が無いだけにぼろ儲けなのですが、

只で手に入る物に金を払ってもらうには、その商品以上に大きな購買動機が

必要でそこにみんな頭を使います。仕入れ原価ゼロ、購買動機ゼロで売り物に

なるものに「美人」というのが有りますが、鮮度が短いところが欠点で、内面的な

引き出しを一杯持っていないと美味しい商売にはなりません。

本に集中できないまま、つらつらそんなさもしいことを考えていたのです。

江戸には水道が有ったようです。地下に埋設した樋を通して江戸中に給水して

いたそうです。長屋に一つ必ずついていた井戸は水道井戸でした。

そして、七夕の7月7日は年に一度の井戸さらいの日でした。

川の水を直接引き入れているので飲料用にはなりません。掘り抜き井戸ばかりと

思っていましたが、そのような事情があるとは知りませんでした。

天の川でしっぽり濡れる織姫と彦星。下界で大忙しの水売り屋。

隣のテーブルとの間にある、深くて暗い河。 ローエンド、ロー。

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