タイミング
2011 年 5 月 10 日 火曜日本を作ったり、作品を発表したりするために、頭で思い描いていたものを、
コツコツとまたは仲間と協議を重ねながら、完成に向かって推敲して
いきます。しかし何らかの原因で、その制作の意欲が急速に萎んで
行くことがあります。そこにはいろんな要因が絡んでいると思います。
でもボルテージが下がったらそれはそれでしょうがないと思います。
偶然何かが生まれるわけではない。それは、いつでも生まれるべくして
生まれるものだと思うのです。完成させるための、最後の高揚感を持ち
得ないままに作品に息吹を吹き込むことは出来ないと思うのです。
三月から見積もりや仕様などの打ち合わせを重ねておいでで近々、
ご入稿のご予定だったお客様から、急遽事情が発生して入稿できなくなった
旨の連絡をいただきました。共同制作者の方との何らかの齟齬が生じた
ためとのことでした。とても気になさっていたので、「何かが生まれるためには、
タイミングがとても大切だと思います。お待ちしております。」とメールを
差し上げました。
ゴールデンウィーク前に京都から訪ねておいでのお客様がいらっしゃって
五月八日の母の日に間に合うように、本を作りたいとご相談がありました。
お話をお聞きしてとても素晴らしい本のようなので、ぎりぎり何時までに
入稿していただければ大丈夫ですよと約束しました。
しかし、その後ご入稿が無かったので、半ば諦めてゴールデンウィークを
迎えることになりました。カレンダー通りの休日予定で二日と六日の出勤は、
半分づつにしてそれぞれ比較的長い連休が取れるように設定しました。
四月二十八日の夜になってご連絡がありました。さてさて困りました。
今回の休みは、一周忌の法要もあったのですが、墓参りとここ1・2年
声を聞いていない91歳になるおばさんに挨拶をしておこうと九州に
行く予定でした。しかし、墓参りや見舞よりも前に踏み出す行いや時間に
係わっていたいと思いました。まっとにかく、私は印刷で食べさせて貰っている
のですから。 で東京に帰って来て、印刷しました。
自殺や病気、事故などで母親を亡くした人たちの、亡き母への思いを文集に
まとめた本です。 「104年目の母の日 こえて伝えたい」
母の日は、104年前、アメリカの女性が亡き母を偲んで教会でカーネーションを
配ったことが由来だそうです。だと思ったんですよ。大体生きてる母ちゃんに
ありがとうなんて思うわけがない。ありがとうではあまりにも他人行儀です。
そんな言葉入ってくる余地がないぐらい、大きな存在です。死なれて初めて
「ありがとう」と云う感謝の気持ちがわいてきます。
この本はとにかく泣けます。印刷しながらこんなに泣いたのは初めてです。
別に墓参りに行かなくても良かったなと思いました。みんな一緒にいるなと
思うたのです。
本を作るいろんなタイミングがありますが、そこに携われるのも
素晴らしい本との出会いを生みます。
この話を5月10日の火曜日の夜に書くと云うのもこれはこれでグッドな
タイミング?