ランドスケープ

2023 年 4 月 7 日

南池袋の明治通り沿いにある古書店、古書往来座。4月から徒歩通勤を

初めています。ヘルメットを被るのが嫌だというのはあるんだけど、15分

と云うのはやはり自転車では大した運動にはならないのです。上の本は

もう何年も前から外のウインドウに飾られていて、気になってはいたの

です。何か寂しい写真だなと思っていた。近くの母屋にふらふらと立ち

寄ってしまいビール1本と焼き鳥を5・6本をつまみに呑み、上機嫌で

往来座の前に来たら上の写真に吸い寄せられた。今まで、「ゲーハード

リッチャー」と云う良く分からない作家だと思っていたのが、今回は

しっかり読めたのです。「ゲルハルト・リヒター」おぉ、リヒターだ。

早速、中に入って見せてもらいました。45年近くかけて描かれた絵が

並んでいます。去年のリヒター展では無かった絵ばかりのようです。

写真の絵は、ケーニッヒシュタインと書かれています。多分要塞の絵で

しょう。近くのゾンネンシュタインはT4計画の重要拠点でここから安楽

死の絶滅計画が始まった言われています。ビルケナウの原点。

タイトルになった場所とドイツ地図を睨んでいくと何かが浮かび上がっ

て来るかも知れない。1963年から2008年の45年と云うのは

殆どライフワークと云えるもの。去年のリヒター展では無かった。

トリとロキタ ダルデンヌ兄弟

2023 年 4 月 5 日

給料から奥さんに渡す金も口止め料と云えなくも無い訳で

色んな思惑で男は金を搾り取られている。映画を見た金は、

面白く無ければ口止め料になり、面白ければ言い触らし料

になる。先週印刷した「ダルデンヌ兄弟」の「トリとロキタ」

を観てきました。なるほどドキュメンタリータッチの映画です。

ベルギー、アフリカ難民、難民申請、養護施設、渡航費用の

捻出、リアルな描写です。弟トリの、危なかしい街中の動きが

唯一、演出っぽい処が有るけど大体リアル。ヨーロッパに来た

ばかりの若者が出し抜けるほど甘い世界ではないのですが、そ

こを敢えてそのまま映していきなり断と突き落とす。リアルな

描写のほうが後味が残ります。カタルシスなんて要らないのだな

思う。そんなものがあるから思考停止で終わってしまう、放置さ

れたまま。欲望の本質がリアル。殺すまでの速さもリアル。

1200円、言い触らし料でした。

ダルデンヌ兄弟

2023 年 3 月 31 日

ネオネオ編集室発行のドキュメンタリー叢書3号は「ダルデンヌ兄弟 

社会をまなざす映像作家」です。

本日3月31日の公開映画「トリとロキタ」に合わせて突貫工事で仕上

げました。ベルギー出身の兄弟で監督をされているお二人です。長く

ドキュメントタッチの作風で数々の賞を受賞されています。カンヌの

パルムドールを2回受賞。

百閒 雑司ヶ谷

2023 年 3 月 29 日

昨日の朝、摘まんだ本が百閒の恋日記。最初のほう何十ページか読んで

やめてしまった本です。後ろの方に娘さんの回顧録が載っていました。

昭和の初めに雑司ヶ谷に住んでいたと書いてあります。盲学校の前と在

ったので調べたら筑波大学付属視覚特別支援学校の事のようですね。

今は、不忍通りの早戸坂と護国寺インターがそのあたりにドンとあって

面影も何もない感じですね。盲学校に出入りされていた宮城さんに琴を

習ったと云う事だから殆どすぐ前ではないかと思いますが学校も少し動

いた可能性もあります。南の漱石山房までは日本女子大の丘を越えて2.5

キロぐらいです。四面四角の病的なコウモン性格と酒食耽溺の放蕩生活、

と云うと言い過ぎか?子供の眼から見ても繊細で弱い人ではあるのだが

百閒の文学的成功に尽くす家族がいなければ到底なしえなかった成果です。

「冥途」一冊に10年掛かったと云います。お金がなくても大阪まで汽車

に乗りたいと思えば行ってしまう人で岡山の実家がすぐ先にあっても、何

もしないでまた汽車に乗って只、東京まで帰ってくる。しかし、弁護する

訳では、ありませんが、多分車窓からじっと沿線の生活を観察しているの

ですね。百閒の自然描写力は恐ろしいものがあります。もうほんと目の前

で映像を見ているような詳細さです。鈴木清純のツィゴイネルワイゼンの

サラサーテの盤の蓄音機は夏目漱石の息子の純一さんのモノとか、本編の

恋日記より伊藤美野さんのこの文章のほうが遥かに面白かった。奥さんの

清子さんは5高時代の友人の娘、焦がれて焦がれてやっとの思いで結婚し

て5人の子供を作って貧乏時代、清子さんの実家の援助を受けながら名を

揚げるが大人数の所帯が文学的環境にあらずとあっさり、妾のこい子の所

に行ってしまうと言うのが凄まじいばかりのわがままぶり。

百閒先生、あんたは怪物君や。

明恵

2023 年 3 月 28 日

今は、青山真治さんの「宝ヶ池の沈まぬ亀Ⅱ」を読書中なのですが

これはなかなかの日記です。映画と音楽の日記にご自身の闘病記が

入って来る、ちょうどコロナ禍の3年間の生活の縛りもある。面白

く無い訳がないと云えばどえらく不謹慎ではありますが、言葉の重

さが違います。深刻でありひょうきんであり。いっぺんに読まない。

本棚の未読の本をつまんで興奮を沈めています。先先週土曜日の朝

につまんだのが「明恵 夢を生きる」河合隼雄だったのです。早く

読まなくちゃと考えながら、年表見たら親鸞と同じ年の生まれですね。

ある意味真逆の生き方をした仏教徒です。それで朝新聞買って会社に

行って書評欄を読み始めたら「あかあかや明恵」を横尾さんが書評し

ている訳です。これこそが明恵的法力の顕現。時々、こんな偶然が起

こります。明恵と云うのが凄い。それで終わらないのです。先週土曜

日に鎌倉からおいで下さった方の詩集の相談を受けていて、昔出版し

た本を読んでいたら何となく明恵が浮かんできたのです。それで、先

週在った事をお話したら、やはり「明恵 夢を生きる」を読んで凄く

影響されたとお話しされました。具象と思念が強く結びつきながら世

界が廻っていると云うのは古くから言われてきている事ですが、目の

当たりにすると矢張り驚きです。

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