映画 ラブレス

2018 年 4 月 9 日 月曜日

色んな隠喩がちりばめられた映画。とてもストレートにそれぞれが

描かれていています。倒木、冷たい水、冬なのに取り残された鳥。

神経質に鳴らされる甲高いピアノ。ずっと静かに響き続ける電子レンジの音。

非常線に貼られるテープが風に吹かれる。罵り合う夫婦、セルフィーの

大人たち。雪遊びの子どもたち。何故か泉谷しげるの「春夏秋冬」が

頭の中で響き始めました。うるさい床の音はそれぞれの苛立ち。ラジオから

流れる政治の話、ロシア国家の問題、愛の無い人達を描きながら対照的な

ボランティアの人たちの献身。しかしその背後にあるイギリス系キリスト教会の

存在を、デフェンダーでなんとなく暗示しています。元共産主義国が作り出

してしまった人民のエゴイズム、厳冬に立ち向かわざる得ない強い克己心。

そこに出現したスマホ。ロシアのジャージを着てランニングマシーンで走る

主人公の目は、我々を覗き込みます。消費主義社会で王様になり、スマホを

手にして神になった我々を。

最初に木に引っ掛かった非常線のテープで映画は終わります。

甲高いピアノの連打。とても良い映画でした。私たちの暗喩。

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