車谷長吉さん 逝く

2015 年 5 月 21 日 木曜日

8年前にイニュニックで初めて車谷さんの本を作らせてもらいました。

非売品の私家版です。装丁、装画、車谷さんです。100冊だけ作成しました。

名前は存じ上げてはいたけど本を読んだことはありませんでした。

その時、ざっと目を通しただけでしたが、強烈な内容でした。

こんなことまで書く人なんだというのがその時の印象です。

その時気にはなったのですが、時間の余裕がなく、次に車谷さんと

向き合うのは新書館から出た3冊の全集でした。

酒も飲まないでひと月ほど延々と読んでいましたね。露悪家、偏執狂。

劣等感、独善性、嫉妬心、虚栄心、ハッタリヤ、へタレ。弱さと悪と

悲しみがこれでもかと云わんばかりに詰め込まれていました。

でもそれを読んでいると気持ちが晴れるのです。

「現代の眼」の編集部にいた。池袋西武で本の編纂をされていた。

姫路のご出身。色んな意味で思い入れを深くした人でした。

そして、最後にノドに何かを詰まらせて死んじゃった。長吉さんらしい。

私の母も特養でノドにパンを詰まらせて死にました。

この本は印刷屋の見本として持っているものです。

カバーは緑の和紙で赤金箔と黒箔。紙の耳は

くれぐれも切らない様にと云うお達しでした。

東京新聞の夕刊に井口さんの追悼文が載っておりました。

「二人の女」はどうも最後の私小説として出版しようとして

いた本のようです。私も全集を読んだ後でちゃんと読み直して

感じたことは、あまりにも書きすぎている、これは世には

出せないだろうと。「私小説作家廃業」となったとても貴重な

本のようです。だから、うちに廻ってきたのでした。そう云われれば

これは爆弾のような本です。とんでもない話が暴露されています。

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