スロットルを開ける

2013 年 10 月 18 日 金曜日

長野県飯山は友人が住んでいたのでよく通ったところです。

もう25年ぐらい前、戸狩温泉スキー場でオフロードバイクのエンデューロ

レースがありました。スキー場で耐久レースと云うのは、なかなか企画が

立てられない事情があります。周回コースを作ってそこを何百台と云う

オフロードバイクが周回を重ねます。前後ろのタイヤには高さ2cmぐらいの

四角のブロックが一杯ついているので、直線はそれほどでもないのですが

コーナーやカーブでは地面を耕すように、どんどん掘られていきます。

なだらかな斜面に無残なまでの穴ぼこや轍が出来てしまうので、後の補修が

大変なのです。それでも、そのような曰く付の企画に乗るのは、それなりの

事情があるのだと思います。さっきたまたま、とがりという漢字を調べるために

検索したら何と今年の8月に破産したみたいです。さて話を戻します。

夏場の客のこないスキー場に客を呼び込むためにエンデューロレースの

企画屋の話に乗ったスキー場。見通しの良いなだらかな大地をフルスロットルで

かっとぶことが出来ると考えた私たち参加者。全国からツワモノ共が集まった

のです。コースはヒルクライムが有ったり、直角の崖を真っ逆さまに落ちたりと

スリル満点のコースでしたが、我々はまだその時点では、下見もしておらず、

どのような地獄が待ち構えているのか、知る由もありませんでした。一周4・5

キロ、15分か20分で周回できるコースだったと思います。相棒は矢澤さん。

曜君の父ちゃんです。バイクは2台持って行っておりました。YAMAHA

DT 200。水冷2サイクル。開会式から雨が降り始め、レーススタート直後から

かなり激しい雨に変わっていきました。どちらが先にスタートをしたのか定かでは

ありませんが、私が頂上付近まで登って下りに差し掛かった時には、そこらじゅう

泥だらけの7人の侍さながらでした。泥の中をスタックしているもの続出。

2サイクルエンジンは、柔らかいタッチのアクセルワークが難しくて、暴れ馬の

ようにいきり立つバイクにてこずります。結局このとき、矢澤さんの新品のDTは

エンジン焼き付いてスクラップになりました。  2メートルぐらい落ちる崖から

70度、60度、30度となだらかになる急坂には、無残にも打ち果て、車体を

起こそうともがき苦しむ、先行者が幾重にも重なります。ワニが待ち構える大河に

飛び込んでいくヌーの大群の様な私たち。意を決してアクセルを開けて落ちて

いくけど、怖がって中途半端にしか開けられないバイクは、ぬかるみにハンドル

を取られてコントロールできず、倒れ落ちていきます。

無意識に記憶のままにこんな話を書きなぐってきて、はたと気が付いたのですが、

少し非常識な感じもありますね。結論を急ぎます。

昨日、会社を辞めて独立するという業者の人の慰労会というか、相談に乗った

のです。意に沿わないやめ方で憤まんやるかたないという話を聞いていて、

なんとなく、戸狩のレースの話をしたのです。人生、何かを始めるとき、坂を駆け

上がるとき、誰でもアクセルはオンです。場合によってはフルスロットルです。

しかし、下り坂に差し掛かると、アクセルは開けられない。怖いですし、少し

でも今の位置にとどまっていたいという気持ちからどうしても開けずらい。

しかしアクセルはスピードの強弱だけではありません。進行方向をコントロール

すると云う事と、気持ちを前向きに思う方向に持っていくというのがアクセル

です。崖っぷちから真っ逆さまに落ちていくときでも、アクセルはオンです。

少しぐらいはコントロールできるし、スロットルを開ける勇気を持っている以上

負けではない。 「男はつらいよ」 だけど、終わりはないのです。

門出の激励のつもりだったのに、真っ逆さまにアクセルオンって励ましている

のか?引導渡しているのか?少し微妙な話になったけど、勇気が出たと云って

くれたので良かったです。

上へ