岡本太郎 「沖縄文化論」

2011 年 3 月 5 日 土曜日

冒頭、柳田國夫氏の「日本残酷物語」からの一節をそのまま

紹介しています。炭焼きのおやじが子供に食べ物を食わせられない。

子供が、「阿爺、この斧で自分たちを殺してくれ」と云ってあおむけに寝た。

それを見るとくらくらして、前後の見境もなく二人を殺してしまう。自分は

死に切れなくて捕えられて牢屋に入れられる。60になって、特赦で世に出て

来たけどそれからどうしたか、すぐに分からなくなってしまった。

岡本太郎さんは、これを人間生命のぎりぎりの美しさ、透明な命の流れ、

ヒューマニズムとか道徳とかのレベルで議論できるレベルではないと

云います。この残酷である美しさ、強さ、無邪気さ。この根源的な人間生命の

逞しさが日本とその周辺を支えてきた。

これを読んで私は、心底感動しました。この人は本物の芸術家だと思いました。

だてにバタイユやピカソと交遊してたわけじゃない。

テレビのイメージと、作品のイメージでどこか輕んじるところがありましたが、

あの形には途轍もなく深い省察と造形があったのです。

楢山節考は、愛と云うより命の美しさの話なのに、美しいと云うには少々

抵抗があった私は、愛の話だと思い込もうとしてしまいました。

その類い稀な眼識が日本の昔を伝え残す沖縄をつぶさに捉えた稀有な文学

と言えるものです。   岡本太郎、 凄いの一言です。

太陽の塔が岡本太郎だ。

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