先祖になる
2013 年 6 月 11 日 火曜日ポレポレ東中野 池谷薫さんドキュメント映画 「先祖になる」 2013年
岩手県陸前高田に住む佐藤直志さん77歳の生きざまを描いたドキュメン
タリー。佐藤さんは半農、半山人。震災で消防団の息子を亡くされ、ご遺体も
見つからないうちから孤軍、生活の復興を決意され、ただ突き進んでいく。
役所の仮設避難所へ移動してくれという言葉をはねのけて。
がれきだらけの土地にそばを蒔く。家を再建するために木を切る。高台の
減反の田んぼ借りて田植えする。生ききることで大きな悲しみを打ち消そう
せんばかりに。長い時間をかけて受けたダメージを直すにはやはり地道な
時間がかかりますが、瞬間の大きなダメージに対するには、治癒のための
瞬発力が必要で本能で佐藤さんは理解しているように思います。
飄々としながら、ニャーニャー言って着実に歩を進めます。
温和でやさしいおじいちゃんです。しかし、決意は固い。
チェーンソウを持つと顔つきから体つきまで変わります。完全に現役の男
です。生きながらにして先祖になるという決意。奥さんも周りの人もみんな
内心反対しています。でも、跡取りの長男がいなくなってしまった以上、自分が
旗にならなきゃしょうがない。後に続くものは、その旗を見ることによって誇りを
失わないで生きていけるのです。
自ら先祖になるということはそういうことだと思います。
それは、一族だけの旗ではなく、地域のみんなの旗だと思います。
絶対、心に焼き付けておかなくてはならない男の顔だと思いました。