300人対13人。この13人と云うのは割合から云うと4.3%にあたります。
江戸時代、武士という人たちは、全人口の2%から3%ぐらいでした。
幕末になり、社会全体がキナ臭くなり始めてからは、各藩とも武士の
登用を増やし始めて、武士の数を5.4%ぐらいまで増やしました。
坂本龍馬の家はその昔商人だったのを、金の力で武士にしてもらったという
家です。去年の「龍馬伝」では龍馬が3・4回云うておりました。
「上士も下士もない、世の中にせにゃー、いかんぜよ。」
これは、上級武士も下級武士もない世の中にしなくてはいけないという
意味ですが、ほとんどの人は微かな違和感を持ったのではないでしょうか。
事実なのか意図的なのかよく分からないセリフです。坂本龍馬が身分制を
無くして万国に開かれた国作りのための礎になった人だと誰もが考えたで
しょうから。明治維新では開国に踏み出し士農工商の身分制度をやめて新しい
政府を作ったのは、維新の志士たちのおかげだと思われておりますが、それは
少し違うと思います。
長い刃物を持って敵と戦える人は、2・3%の武士だけです。
当時の大英帝国にしても、アメリカにしても徴兵制を布いていて軍人の数は、
圧倒的に多かった。外国に脅されて不利な条約を結ばされて、中国のように
植民地にされるのではないかと怯えた武士階級は、自分たちから身分制度
やめてしまいました。しかし統治の仕方を変えたにすぎません。
上手くシステムを変え国を強くしながら支配の形を目に見えなくしていきました。
この映画の中で、人を切ったことがあるのは平山一人だけだという設定のよう
ですが、だとしたら、あまりにも殺陣や戦い方に無理があります。
当時の武士と云うのはもう少し賢い人たちだったように思います。
いつも刀を抜いていたらとてもじゃないが命が持たない。
2%と云うのは2人対98人です。または1人対49人です。これはいくらなん
でも力で抑えきれるものではないでしょう。乱闘などの経験がある人だったら
分かると思いますが、生存本能をかけた戦いの場合、火事場の馬鹿力的な
筋力を使ってしまうため、せいぜい20秒か30秒ぐらいしか保たないのです。
「切って切って切りまくれ」というのは、少々無理がある。
武士道とは死ぬことと見つけたりと云うのは、葉隠れの中の言葉です。
私は、これは少し違うと思います。人を殺す道具をいつも身に帯びれば
それはもう死ぬよりほかないのです。武器とはそういうもので、持てば
持つだけ弱くなる。