東京マラソン

2007 年 2 月 18 日 日曜日

去年の暮れに腕を折ってしまい、東京マラソンには出場できそうもないと言っていた、友人の加トちゃんが前日になって「やっぱり、出るよう」と言うのを聞いていたのです。しかし、前日から降り続いている雨に、応援に行こうか、やめようかと迷いながらスタートを待ってもいたのです。

雨に打たれながら合図を待つ、白い装束に身を包んだようにも見えるランナーたちは、今から寒行に向かう修行僧にも見え、しかし、スタートの合図で三万人が一斉に走り出すのを見たとたん、なぜか部屋の中で見ていることなんかできない気分になってしまい、家を飛び出していました。

まず浅草寺に向かい、お参りを済ませて、雷門の前あたりに陣取り、応援することにしました。寒いのに応援の人たちで一杯で、特にこのあたりに集う人々は、熱い人たちが多いのか、大盛り上がりです。振る舞い酒のお店もあったので、皆それで極めこんでいるのかも知れません。

30Kぐらいの地点の我々の前を上位の選手が通過していった時は、雨が一段と強く降りしきり、皆、寒さと消耗で悲壮感さえ漂はせています。しかし、必死の姿と言うのは、心を打ちます。応援の声が思わず出てしまう。服を着ている我々でさえ、寒くて震えているんですから、ランナーの人たちの寒さは、如何ほどかと思ってしまいます。

一時間ほど応援して、朝食を食べていなかったので、さてどうしようかと思案していたら、ちょうどすぐ後ろの立ち食い寿司屋が商売を始めたので、これはすぐ食べれて都合がいいやと思い、お店に入ることにしました。二坪ぐらいの小さなお店で、10人ぐらい入れば一杯のお店であります。始めはイカやアジなどを食べていたのですが、ちょうど私の目の前のネタケースに、ボタンえびがあり、どうしても目がいってしまう。我慢できずについ注文してしまいました。

ひとつ食べて思わずかみさんに「うっ、うまいよ。」と言おうとして、外側に目をやったとたん、コースを走るランナーの歪んだ顔が目に入ってしまいました。思わず口からこぼれ出た言葉が「こりゃ、バチがあたるよ・・・・。」その瞬間お店の中は、凍り付いてしまい、そそくさと逃げるようにおん出ることになってしまいました。

次に向かったのは、ゴール地点のビックサイトです。加トちゃんの家族と合流してゴールを待ちます。加トチャンは一応サブスリーです。もう何年も前から、月に300K以上走っています。体脂肪率も7,8%ぐらいで見事なぐらい痩せています。久しぶりに会う友人達は、私に小さな声で「どこかわるいの?」と聞いてきます。去年の笑い話で、果物屋にお中元の桃を買いに行って、発送の手続きをして帰りがけ、あまりにも美味しそうだったので、家にも買って行こうかとなり「もう一つこれ下さい。」と言うと、お店の親父さんは「いいよ、持っていきな。」と言って俯いてしまったそうです。ごく最近亡くされた方に面影が、ダブったのかも知れません。

彼は3時間12分でゴールしてきました。いつものマラソンは、スタート近辺とゴール近くに人がいるだけで、他はずっと応援の人はいないので、今回ほど走るのが嬉しいことはなかったとのことです。何年も毎日欠かさず走っていると、近所の人や周りの人たちも、しっかり見ているようで、その継続する意志と勤勉さに、感心するのか、町内会の役員をやってほしいとか、PTAの役員になってほしいとか、いろんな声がかかるようです。私なんかは、「加トちゃん、よっぽど暇なんだと、みんな思っているんだよ」と言ってやるんですが・・・・・。

私も、いつか走りたいと思っています。見てるより断然ランナーの方がおもろしそうです。だってあんな一杯一杯の自分まるだしの姿を皆、心から応援してくれるだもの。

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