
造本装幀コンクールと云うのは、業界向けの賞なので業界では評価されても
それが販売に結び付くかと云うとそうでも無くて低迷していましたが11月に
ひとり出版社と云う切り口も含めて大手新聞社にインタビュー記事が載ると
飛ぶように売れ始めてやっと2刷りになりました。西山さんはおひとりで出
版社を立ち上げて、編集から営業、装丁、印刷製本など一人で何役も熟して
おいでのスーパーウーマンです。丁半博打の鉄火場のような処で勇壮果敢、
おひとりで切り盛りされるだけあって向こう意気はそれなりにお強い。そん
な西山さんをしょっちゅう泣かせているのが私です。この前の表彰式も、表
彰台に上がらなかったのは、最後の製本方法で対立して「イニュニックは、
引かせて頂きます」と一旦は仕事を断ったからなのです。そこで泣かれてし
まって渋々と印刷だけという条件でお仕事を受けたした次第です。(講演等
色々な処でお話しされているようなので)この2刷りでも揉めました。カバ
ーの色等、色々と変えると云うのです。「それは駄目でしょう?」と云いま
した。焦げ茶色で地味だからピンクにしたい、その方が売れる筈と云うのが
先生の言い分。「そんなことしたら、業界全てを敵に回しますよ」と。
この話も台湾の「ひとり出版社」というイベントで「印刷会社の社長におこ
られた」と云う笑い話で、台湾の新聞にも書かれた記事が有ったのでばらし
ます。私は何だか西山さんのネタにばかりなっている感じなんです。
今、大手出版社をやめて「ひとり出版社」を立ち上げておいでの方は、本当
に沢山おいでです。作家が自分で本を作って売ると云うのから、編集者が作
家と一緒に本を作って売るという、より強力なタッグが生まれ始めている。
販売イヴェントも何だか凄い勢いで増えています。本が売れないのではなく
て、今の本のビジネスモデルが破綻し始めているだけのような気がします。
「ひとり出版社」と云うのがこれからの出版の王道になるのかどうか?どち
らにしても少部数出版は大体イニュニックに来てくれている様で、うちとし
ては目出度し目出度しなのです。