湯田中渋温泉 蕎麦 やり家

2023 年 1 月 5 日 木曜日

駐車場に車を停めて、店の入り口を開けると直ぐそこに

困った顔をした妻が座っていた。その向こうを見た瞬間

困り顔の意味が解りました。「此処は狂気のそば屋だ」

しかし、入った以上食べない訳にはいかない。

座敷に上がって坐り、妻が「冷やしとろろそば」と云う

ので「私もそれを」と二つ頼んだのです。四方に飾られた

人形やお札、キャラクターに睨まれながら小さくなって

そばを待ったのです。出て来たのは盛と蕎麦猪口と違い

普通のどんぶりで出て来ました。上から白いとろろがか

かっています。つゆはたっぷりで冷たい。腹を据えて一

口食べました。美味い。トテモツモなく美味い。中々の味。

蕎麦は茹でたて、しっかり水で締めている。冷たいつゆも

美味しい。女将さんは、平安風の着物を瀟洒に着こなし、

切り盛りしています。店を飾っているのは、この人だなと

云う雰囲気は在ります。それを黙って見ている蕎麦職人。

ぶれる事無く、ちゃんと自分の仕事をしている。申し訳な

い気持ちが女将さんの素足に現われている。タナトスやフェ

ティシズムとは、真逆にあるそばを打つと云う精神。これは

温泉街に咲いたひとつの愛。店で何かを食らうと云うのは、

なかんずく店主の人生を食ら事なんだなあと、しみじみ噛み

しめた。

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