わが生涯のすべて マリオ・ジャコメッリ
2022 年 8 月 10 日 水曜日
亡くなる2か月前の姪御さんのインタビュー。9才で父親を失くして
母は、ホスピスの洗濯婦として家族を支えます。13才で印刷屋の見
習いとなり母と一緒に家族を支えます。趣味は絵を描く事、詩を読む事。
28歳のクリスマスにカメラを買って翌日、浜辺に行って打ち寄せる波を
カメラで撮って「上陸」、写真家になる。この人の足跡をたどると、日本
語の写真と云うのは随分違う物に感じられます。フォトグラファーと云う
よりこの方は、画家であり詩人です。ホスピスは、母の仕事場でしたし、
少年の頃出入りしていた処です。ある家族との諍いでここを追われる事に
なります。神学校の生徒を撮った写真も葉巻や煙草を渡したせいで追放さ
れます。農夫一家にお金を渡してモデルになって貰っています。三脚立て
てしっかり構図を決めて、あらゆる陰翳を決めてシャッターを押します。
しかしそれらの事が判ったからと云って作品の秘密が暴かれた訳でも何で
もない。詩は詩です。画であり、生きている傷跡であり、虚無です。
母親と同じことをやって来たのだと思いました。母はシーツを白く洗い
ジャコメッリは、プリントを白く洗い続けた。死を恐れ続けたとは思わ
なかった。あそこが帰る場所だった様に思いました。印刷屋と云うのは
何故か吸い取られる感じがするのです。機械が動くそばでじっとその回
転を見ているとドンドン自分が消えて行く感じがします。職業病?