山河故人
2016 年 5 月 16 日 月曜日ジャ・ジャンク―監督作品。「山河ノスタルジア」
山西省フェンヤンを舞台に25年の道。15年目、10年目。
現在を通り過ぎて10年後の未来まで話は進みます。
主人公の女性教師、タオ。タオと云うからどうしても老子の道教
タオを思い浮かべてしまいますが、中国での発音はダオですので
やはり、映画の中でも云っているように波のタオなんだと思いますが、
敢えて映画の中で中国人同士が波のタオだと説明しているのが、やはり
中国以外での言い方、老子のタオを意識させようという意図が感じられないこともない。
ジャ・ジャンク―の映画は、「罪の手ざわり」を見ています。
横浜の「シネマ893」を主宰する小島さんが2014年の外国作品、ベスト1と
選んでいるのを見てDVDで借りて観ました。社会問題をハードボイルドなタッチで
撮っていて、中国の格差と労働者の現実の酷薄さが際立っていた。
でもやはりDVDでは集中してみることが難しい。細部がおろそかになります。
今日は中国で10年に渡る文化大革命が始まった日だとか。下放、山西省は
「延安の娘」で描かれていた世界ですが、森もない林も少ない、ただ剥き出しの
大地ばかりが広がるところです。川も化学薬品で汚染されています。
映画は、ペットショップボーイズの「GO WEST」の曲に合わせて、登場人物
30人ばかりが、ディスコ風に踊るところから始まります。「罪の手ざわり」とはまるで
違います。
1999年の正月、2000年の正月?明日から華やかな新世紀が始まるという祝祭から
映画は始まります。豊かな感情が丁寧に描かれていく。交差する道、離反していく道、
帰ってくる道。縁が社会を創り、道が人生を創っていく。それらを包み込んでいるのは
大きな山河、しかしその山河はある場所にあるわけでは無く、それぞれの道の中にある。
重層的に重なったイメージの断片が自分自身の道と重なったとき、いつしかボロボロ
泣いておりました。映画を見ながら自分自身の歩いてきた道を思い返していました。
最後、タオが雪の中で一人、緩やかに冒頭の「GO WEST」を踊ります。
ここで、涙腺が全開になります。圧倒的な傑作。これほどの映画は本当に久しぶり
でした。私は、割と中国の人たちを知っているので、彼らの様々を抵抗なく受け入れる
ことができます。壁がない分、同じ道に見えたのでしょう。