「さよなら、人類」

2015 年 10 月 28 日 水曜日

スエ―デン映画。ロイ・アンダーソン監督。

原題「A pigeon Sat on a Branch Reflecting on Existense」

「存在に反映して枝に鳩が座っていた」と云う意味。

意識された鳩と云う役割という意味でしょうか?

39編のオムニバス形式の短編シーンが続きます。

面白グッズを売り歩くサムとヨナタンの二人が大きな縦軸を

構成します。スタジオセットに固定カメラでワンカット、ワンシーン。

書き割りの様な現実感に乏しいシーンに単一の視点。

俳優はみんなくたびれていて、すえた臭いを発しています。

顔をかすかに白く塗っているのは、仮面を表しているのかもしれません。

中学時代、スエ―デンはフリーセックスの国だという情報にヤタラメッタラ

興奮したものでした。碧眼金髪、白人女性。黄色日本人の両親を

呪ったものです。ゆりかごから墓場までの福祉国家。税金は半分以上

取られるけどみんな平和で平等な社会と思っていました。

ノーベル賞のおかげで平和と福祉のリーダー的イメージがあります。

人殺しの爆弾売って儲けた金で作った賞なんですけどね。

でもいろいろと調べるとそのようなイメージと少し違う世界が垣間

見えます。プロテスタント教会に立憲君主制。スエ―デン国王が鎮座され、

国家権力が強いようです。医師と警察が市民の頭部に送信機をインプラント

手術する法案を通そうとしたけど否決された。けど全然納得していないようです。

第一次大戦も第二次大戦も参加はしていないけど、ドイツよりの立場にいた

ようです。スエ―デン鋼は、良質の鋼を造ります。鉄の硬さでは「スナップオン」

など工具類で有名です。せっせせっせとドイツの戦車の鋼を輸出していました。

フィンランド、デンマーク、ノルウェーなどは反ナチス、ユダヤ人保護、レジス

タンスの味方をしていたけど、スエ―デンはナチス相手に商売です。

日本の江戸時代。幸せの国のブータン。福祉国家のスエ―デン。

みんなフリーセックスの国です。明治になってキリスト教の価値観が押し付け

られて盆踊り禁止令が出た時、日本の各地で警察官が怒り狂った若者に撲殺

されています。ブータンは今は、セックスでは満足できなくて麻薬に手を出して

いるそうで、国全体が壊れ始めているようです。

「さよなら、人類」はスエ―デンのことを考察した映画だと思います。

自由が少ない閉塞感。みんなと同じ価値観。乱調の許されない人生。

滅びかけているのはスエ―デンで、平和の象徴の鳩に引導を渡されようと

している所が冒頭のシーンです。自分たち自身が作り出した鳩に。

しかしながら、理想の国家像と云われているスエ―デンに破たんが見える

という事は早晩、恐竜の隣に人類の剥製が並ぶ事になるのかもしれません。

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