モノクロ写真

2012 年 12 月 1 日 土曜日

尾仲浩二氏のモノクロ写真集 「slow boat」

モノクロ写真の製版技術で四苦八苦しております。

家からモノクロ写真集を持って来て、それぞれどのような製版を

しているのか、100倍のルーペで毎晩研究しております。

尾仲さんのslow boatは凸版さん専門家チームが特別に

製版したもので、独特の製版をしています。墨とグレーの

2色刷りです。日本の田舎町のノスタルジックな雰囲気を

独特な空気感に作り上げています。晴れている空にシャドウが

入っているのに道路の縁石は真っ白なハイライト。

全体的に中間から明るい部分にたくさんグレーが入っています。

でもとても効果的に時代のざらつきのようなものが出ています。

これこそ、印刷屋の仕事だと思います。

実は現在モノクロ製版の校正を見ていただいてから仕事をお受け

するかどうかの試験を受けることになっております。

会社の書棚にこの本が好きで飾ってあるのですが、うちに

お出でになる方は森山さんと関係ある方がとても多いようです。

福山えみさんの「月がついてくる」は私のとても好きな写真集の

一つです。すべての写真が塀越し、格子越し、金網越し、必ず

何かの物陰から撮られています。近づくのが怖い異邦人の

ようですが、私には6歳で亡くなった姉のことを想起させます。

そして人が誰も写っていない。これはひょっとして私かもしれ

ませんが、とにかく向こうが怖いのか、懐かしいのか、この距離が

とてももどかしいのですが、気持ちを小さく揺さぶります。

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