兄と弟

2007 年 11 月 4 日 日曜日

神奈川県高校駅伝大会。今回は、シュンがもう、レギュラーになって出場するというのでネジを巻きにやって来ました。この兄弟には元々素質はあるようです。根性と負けん気だけで勝ち進める程に甘い世界ではないでしょうが、半年で選手に選ばれるというのは凄い。

1区のスタートは、ヨーの字。快調に飛ばして行きます。ワクワクするけど、去年のような胸の高まりはもうない。当たり前のように見ている。父の字も母の字も目標タイムに届かなかったので暗い顔をしている。

しかし、子供のいない私から見れば贅沢な落胆に思えます。頭が良くて、ピアノが弾けて、礼儀正しくて、全国レベルの選手だ。これ以上何を望むものがあるでしょう?過剰な期待は、プレッシャーを生むだけの様に思います。

シュンは、そんな兄とは、対照的です。クールにいつも冷やかな笑みを浮かべてマイペースです。今日、5区で思わぬシュンを発見しました。コーナーの向こうで「シュン、ラストスパートだぁ!!」と叫ぶ、加トちゃんの声が聞こえて来ました。カメラを構える私の前に駆け上がって来たのは、夜叉とも阿修羅にも見紛う憤怒のシュンでした。

久々に戦う男の顔を見たように思った。

小さい頃、「オイ、ヤマ!外で遊ぼうぜ」なんて40過ぎの私を呼び捨てで、「なんだ、このゴリラ野郎」ってからかうと本気になって殴りかかって来る程にやんちゃだったけど、大病を患ってから自省の気持ちが深くなったようで、最近はとんと怒った顔なんか見なかった。今日久しぶりに鬼の顔が出てきていた。

レース前にシュンを励ましていて、後頭部に1センチぐらいのハゲが5つぐらいあるのを発見しました。「随分ひどいけがをしたみたいだけど、どうしたの?」と聞くと、ニヤニヤしながら、「昔、5歳離れた妹に夜寝ているところを金づちで襲撃された」そうです。「なんともまあ、気性の激しい兄弟たちだ」勿論今は、みんな仲がいいけど。しかし、この激しさが強さを生むのでしょう。

表舞台で踊る兄を袖で見続け、敲いては折り敲いては折り、心を刃金のように鍛え上げてきた鬼が、表舞台に殴りこんで来たような、駅伝デビューにも思えました。

次は、いきなり都大路です。

上へ